MOSSY HILL(What a fucking wonderful world) |
アートワーク |
執筆: 小金沢 智 |
公開日: 2008年 12月 09日 |
その美しさだけを口にして終わりたくなる。いやむしろ、言葉など発せず、沈黙に殉じたいというのが本心だ。そこで起こっているすべてを語ろうとするには言葉はあまりに不便で、野暮ったく、ただそこに佇みたいという思いだけが湧き上がる。東の作品は往々にしてそういった要素があるのだが、「苔むす丘」と題されたこの作品はその美しさに加え、東によって作られたものであるにも関わらずそれ自体で自立する力強さを他にも増して備えていた。ならば俄然、言葉は不要ではないか。 《MOSSY HILL(What a fucking wonderful world)》はミュージシャン・ゆずとのコラボレーションであり、アルバム「Wonderful World」(2008年4月)のアートワークに使われた作品である。様々な種類の苔を木の形をしたFRPに接着することで作られているのだが、なんとその中には連れてこられた二匹の蛙が逃げ出すことなく生息し、時には気持ちのよさそうな顔をして眠っているのだから驚きである。それぞれの生物にはその生物に合った物のサイズというものがあり、わたしたち人間も蟻から見れば大きいが象から見れば小さい。唐突だが、優れた山水画はその絵画空間の中に鑑賞者を招き入れる何らかの装置(たとえば、画中人物)が存在する。わたしは、わたしにとっては小さいけれども蛙にとってはちょうどいいに違いないその空間に、蛙となって入っていきたい気持ちに駆られた。 作品詳細アーティスト: 東信 |
最終更新 2015年 11月 01日 |