Concrete×Bulb |
アートワーク |
執筆: 小金沢 智 |
公開日: 2008年 11月 24日 |
茶色い塊から垣間見える緑は、わずかな期間で、植えられたコンクリートの側面に対してほぼ垂直に鋭くそそり立つ。その太い芽と茎はさながら男性器を想起させるが、先端は赤みを覗かせながら蕾み、美しい大輪を咲かせていく。開花後の姿からは想像できないが、それはコンクリートに埋められながらも根に蓄えられた養分で十分に育っていくような、強靭な生命力を持った花なのである。東は直立する長方形のコンクリートに、アマリリスの球根を成長の過程がはっきりわかるように埋め込み、作品として発表した。 球根にはドラムの、響いてくるような低音があるというのが東の考えである。バンドを組みギターを担当している東は、当初自身の花/植物を用いた作品にも音楽を求めていた。「はじめやりはじめたときにはすごくそこが先行していた。音っぽいものを使って音があるような作品を作りたい、音が鳴っているものを作りたい」(インタビューより)。その後東の関心は、余白や空間、そして生命が生きて死ぬということへ向かっていくが、それでも音楽はその底に脈々と流れているという。こうした花/植物に音を見いだすという東の感覚は、必ずしも一般的なものではない。だからこそ、視覚だけではない、花/植物の新しい可能性が拓かれていくことに期待したいのである。 作品詳細アーティスト: 東信 |
最終更新 2015年 11月 01日 |