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三宅砂織:image castings
編集部ノート
執筆: 田中 みずき   
公開日: 2010年 3月 26日

活躍の期待される平面作品を制作するアーティストに贈られるVOCA賞の2010年度大賞を受賞した三宅砂織の個展。展示作は、三宅の使っている技法「フォトグラム」(後述)で作られた新作の平面作5点と、旧作1点、実験作などを使ったインスタレーション1点。  新作で見られるモチーフは、作者が長年向き合ってきた、少女等。黒い画面に白く浮かぶ線が儚さを感じさせる。女性にお勧めと思いつつ、美術ファンにも是非見て頂きたい。三宅の使う「フォトグラム」とは、印画紙の上に、作者が描いた絵や小物を置いて写しこむ技法だ。「写真」と「絵画」という概念を再考させる一面があり、美術史の流れの中でも重要な試みがなされていると言えるだろう。  技法がコンセプトに繋がり、理論的にしっかりと確立されている。ただし、作者の作品の強さはそれだけに留まらない。初めて観るなら、美術史云々は忘れて、まず、作品の前に立って眺めてみて欲しい。皮膚感覚や記憶、不思議な空間の広がりなど、言葉に収めきれないものがしっかりと写しこまれているのだ。例えば、作品中、シーツやカーテンを描いた線は作者の弧を描くような手の動きの痕跡でもあり、布を掴む一瞬の感触を連想させる。印画紙に置いて写しこまれた布片や宝石のようなものは、女性なら自分の持っていたものを思いだし、自らの記憶にも繋がっていくだろう。  飲食店なども多いこの界隈、春の日に寄り道するのに楽しい場所でもある。ギャラリーでは美術関連書籍や人気作家の作品をモチーフにしたグッズを販売していて、それらを見るのも面白く、一緒に行った人との雑談も問題無い。展示作以外の作品も販売しているため、ギャラリーに頼めば観ることができるそうだ。

最終更新 2010年 6月 27日
 

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