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福本歩:フクモ陶器晩餐会
編集部ノート
執筆: 小金沢 智   
公開日: 2009年 12月 16日

陶芸作品を実用の有無から「器」と言ったり「オブジェ」と言ったりするが、福本歩の作品はそのちょうど中間で、実用を狙っているがその実用の場面があまりに奇天烈であるという点で確信犯的な面白さがある。 まず驚くのは、ギャラリーの変貌具合だ。壁一面には茶色い紙にあたかも明治期の舞踏会らしき光景が描かれており、天井からは「SALE」と書かれた黄色い紙が垂れ下がり、そこに作品のキャッチコピーらしき文言が書かれている。そして円形のテーブルの上にところ狭しと置かれているのが福本の陶器作品だ。中央が既にご飯がよそってあるかのごとく盛り上がったカレー用の皿、どこでもお茶が飲めるようにとベルト付きの湯のみ。腕時計のように手首に常時付けることができるよう配慮してある。さぞかしお茶は飲みにくいことだろう。いずれの作品もこのような、言ってしまえばトンチンカンな作品にほかならない。しかしそのトンチンカンな作品を、作家はおそらく真面目に作っている。だから惹かれるのである。

最終更新 2010年 6月 27日
 

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