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異界の風景
編集部ノート
執筆: 小金沢 智   
公開日: 2009年 10月 21日

東京芸術大学の所蔵作品と教職員の作品を組み合わせた展覧会。冒頭から展示されるコレクションはなるほど東京芸術大学の歴史の厚みを感じさせるに十分であり、さらに教職員の作品を組み合わせて展示することで一つの展覧会を作り上げようという試みは面白い。しかし、わかりにくい順路や誰が書いたか不明な解説パネルなど鑑賞しにくい展示構成は否めず、セレクトされた作家/作品の質の程度も甚だしいため、美術教育の場も教職員の政治的な思惑の跋扈する「異界」なのではないかと想像しないではいられない。 そんな中、唯一アクチュアルな作品を出品していたのが中村政人である。展示室から一歩ひいた場所、螺旋階段や休憩コーナー(?)に流れているビデオは、中村が1997年から行っている≪美術と教育プロジェクト≫の、美術関係者へのインタビューを映したものだ。作家や教育者、評論家など多くの美術関係者が語るそれぞれの「美術」の「教育」論は貴重なアーカイブであり既に数冊の書籍にまとめられているが、映像を見る機会はそうないのではないか。 さらに中村による作品を紹介しよう。最後の展示室前には透明のボックスが置かれ、中には黄色い粘土が入っており、その横にはこう書かれた看板が置かれている。「日本の美術教育を変えたいと思う人は、螺旋階段から黄色の粘土を一つ落としてください」。投げ落として会場を後にした。

最終更新 2015年 11月 03日
 

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