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金子朋樹:Recurrence東京⇌御殿場
編集部ノート
執筆: 小金沢 智   
公開日: 2009年 10月 20日

2008年から数えて二度目となるギャラリーQでの個展。前回が墨を中心に用い富士を描いた屏風状の作品であることを思い起こせば、今回の個展は墨に加え色を用いたものが大半であり、加えて描写されているものがキャッチーになっているという点で変化が著しい。 しかし前回の富士山に加え、今回描写されているヘリコプターやパラシュートといった軍隊を想起させるモチーフは、作家の故郷が富士の麓の、軍用地でもある静岡県御殿場市だからにほかならない。つまり一見した作品の印象は異なるが、前回と今回の個展のテーマは作家のルーツという点で共通していると言えるだろう。作品が一様に薄い「膜」で覆われているかのように茫漠としているのも、〈記憶〉や〈時間〉を鑑賞者に想起させるためか。 ただ、私はそのモチーフが内包せざるを得ない歴史的重さとは対照的に、作品の表面が綺麗に過ぎることがいささか気にかかった。それゆえどのような態度をもって作品と対峙すればよいのか戸惑ったのである。だがそれは、金子がその土地で暮らしてきたがゆえの当然の画面処理なのかもしれない。そもそもすんなりと受け入れることのできる作品であれば、展覧会に行く必要などないのである。

最終更新 2015年 11月 03日
 

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