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辻直之:風の精
編集部ノート
執筆: 小金沢 智   
公開日: 2009年 8月 10日

2008年に東京国立近代美術館と京都国立近代美術館で開催された「現代美術への視点6 エモーショナル・ドローイング」展で辻を知った人は多いのではないか。私もその一人だが、今回の個展では旧作4点に加え、新作≪風の精≫(2009年)を発表している。 辻のアニメーションは、カットを木炭で描き、撮影したのち、動かす部分を消し、また同じ紙に描く、というプロセスを経て制作される。したがってアニメーションは、登場するキャラクターが動けば動くほど木炭の跡が否応なく残り続け、むしろその効果を狙ったものになっている。そうして一つの形が変化し続ける辻のアニメーションは、まるで私たちの日常で空の雲がなにか違うもののかたちに見えることと地続きだ。今回の「風」や旧作では「雲」など、形の定まっていないもののメタモルフォーゼはその手法に合致している。

最終更新 2015年 11月 03日
 

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