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増本泰斗:Delicate Tongue
編集部ノート
執筆: 小金沢 智   
公開日: 2009年 7月 16日

ギャラリー壁面に流れているのは、展覧会初日に行なわれたパフォーマンスの記録映像。それは声に出すのも躊躇われる、セクシャルで破廉恥な内容のテキストの大人数での朗読風景を撮影したものである。ビデオカメラはそのテキストの大人数であったり最終的には一人でもあったりする朗読者の表情の移ろいが撮られ、その状況に顔をしかめたり無視したりする傍観者が撮られ、あまりのいたたまれなさから(?)会場を出る観客が撮られ、撮影者自身も撮られている。そして会場には一つのカメラが備え付けられ、それを見ている私の映像が同時にもうひとつの小さいテレビモニタに映し出される。 傍観者よろしく醒めた目でそのパフォーマンスを見ている私もまた見られているという逆転は、決して目新しいものではない。テキストの内容のあまりの馬鹿馬鹿しさが、見る/見られるという対立自体を宙づりにするという点に本展の痛快さがある。声がこもり、映像ではほとんどの朗読内容を聞き分けることができない。だが心配することはない。テキストは壁面に貼り出されている。あなたは果たして、どんな顔をしてそれを読むのだろうか。

最終更新 2010年 6月 27日
 

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