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展 北川 一成 “きいちゃん”
展覧会
執筆: カロンズネット編集   
公開日: 2010年 3月 25日

「大阪ももっと元気に」 2010年〈当展メインイメージ〉 画像提供:YOD Gallery copy right(c) Issay KITAGAWA

2008年の弊廊での個展以降、北川の活動の幅の広がりは留まることを知りません。デザイナーとしての枠をはるかに超えた様々な表現手法の提示は、明らかに次世代の新たな価値観を創出する目的を持つ現代アートの世界に多くの反響をもたらし続けています。写真家新津保建秀とのアートユニット「ヒント日」では、写真・映像といった他領域との融合に加え、北川の真骨頂である印刷技術への深い研究から、巨大キャンバスに高画質の画像を転写する特殊技術を駆使した平面作品を関西の複数企業とのコラボレーションにより誕生させました。昨年はホテルクラスカと新丸ビルでのヒント日巡回展、ギンザ・グラフィック・ギャラリー、ヒルサイドテラスでの個展などを開催し、北川の予測不可能な活動は領域の枠組みを超え、多方面で注目を集めています。

当展は、北川の手から生み出されたキャラクター"きいちゃん"が、あらゆるかたち、姿になってギャラリー内をインスタレーションで埋め尽くします。"きいちゃん"とは、北川が昨年「東京もっと元気に」プロジェクトのイメージキャラクターとして発表したものです。リーマンショック以降の不景気から以前の活況と元気を取り戻そうと、東京の飲食業の起業家が中心となって立ち上がったこのプロジェクトに、元気の象徴としての笑顔と、成長の象徴としての乳児をキーワードに、現在も引き続き東京の街を彩っています。

「きいちゃん」は、人と人との関係や社会の気配を明示すべく制作したキャラクターである。

私の創造したオリジナルの「きいちゃん」は「産まれたばかりの赤ちゃん」ということである。

キャラクター「きいちゃん」は、私の一つの原型からはじまり多様に進化する関係とプロセスを作品とする。
たとえば、「きいちゃん」がロボットになった作品がある。
首から上が「きいちゃん」で、首から下が機械である。
「きいちゃん」プロジェクトは、今日のインターネットなどの媒体と人間の思考の関係や現代社会をあぶり出そうとする実験でもある。
インターネットなどの媒体の出現は、バーチャルな人間関係を加速している。

私はそれに魅力を感じまた同時に歪な不安を覚える。
身体的な対峙を避けようとしている人間社会は弱い。
-北川一成

今回、当展の協賛をいただくさまざまな領域の方々と協働で作り上げられる"きいちゃん"たちは、この北川の言葉が物語る通り、もう一度原点に立ち返って本来あるべき人間力をあらゆる人々と一体となって再構築していく象徴として展開されていきます。こうした他者との協働による創造のダイナミズムを鑑賞者とも共有すべく、来廊されたみなさまにも一人一人の"きいちゃん"を作っていただくインタラクティブな仕掛けも用意いたします。一人ではない数多くの人々との実体ある感覚の接触によって、そこから新たな創造性が生まれていくことを作品と心身共に体感していただければと思います。

また会期中4月24日(土)には、「アートロボット"きいちゃん"」のパフォーマンスを弊廊にて開催いたします。科学技術との融合によってアートロボットとして生命が宿った"きいちゃん"が、実際の乳児のようにギャラリー内を動き回ります。大きな産声を上げて無邪気に遊ぶ"きいちゃん"が、ここ大阪のみならず関西全体に活力をみなぎらすべく、様々な領域を巻き込んで成長を獲得する象徴として動き始めます。私たち自らの子供の誕生と成長を喜ぶかのように、今後の"きいちゃん"の一挙一動にぜひご注目ください。

なお今回は弊廊の展示に先駆けて3月23日にスタートするdddギャラリー(大阪)の展覧会を皮切りに、mihoproject(京都)、成安造形大学ギャラリーアートサイト(大津)の4ギャラリーで北川一成展が同時多発的に開催され、「MULTIPLE IMPACT= Issay Kitagawa」と題した北川一成の全貌が一堂にご覧いただける大規模な企画となっております。

関西の4ギャラリーの展示を通じて北川が提示するボーダレスな表現は、行き詰まり感がみなぎる実社会の突破口としての指針が随所に見られます。北川の他領域を巻き込んでいく創造活動は、この"きいちゃん"を通じて本来あるべき人類の成長過程の重要な要素が何なのか、私たちに問いかけてくれるはずです。

北川一成(Issay Kitagawa) プロフィール

1965年兵庫県加西市生まれ。筑波大学卒業。「Design × Printing = GRAPH」を理念に多様な印刷技術を駆使した印刷とデザインの融合を追求。
2007年 21_21 DESIGN SIGHT(東京)サマープログラム「落狂楽笑」の空間美術を担当
2008年 個展 DEEPER IMAGINATION (YOD Gallery・大阪)、ART OSAKA(堂島ホテル・大阪、YOD Galleryより出品、'09)、Dignity and Beauty [ヒント日](YOD Gallery・大阪)、Daegu Art Fair(大邱・韓国、YOD Galleryより出品)、見えない視線 [ヒント日](Hotel Claska・東京)
2009年 アートフェア東京(東京ビルTOKIA、YOD Galleryより出品)、第281回企画展 北川一成(ギンザグラフィックギャラリー・東京)、たべるの だいすき(ヒルサイドフォーラム・東京)
2010年 開館25周年記念アトリエシリーズ後期 VOL.7 北川一成展(西脇市岡之山美術館・兵庫)
著書『変わる価値』(発行:ワークスコーポレーション)、書籍『ブランドは根性』(発行:日経BP社)
URL: www.moshi-moshi.jp

※全文提供: YOD Gallery

最終更新 2010年 4月 06日
 

編集部ノート    執筆:平田剛志


きいちゃん。彼か彼女かはわからないが、2009年に「東京もっと元気に」プロジェクトのイメージキャラクターが「きいちゃん」である。今展では「大阪もっと元気に」というメッセージを発している。
その、きいちゃん。見ると黄色く丸い顔型はスマイリーマークを想起させるお顔である。格別、目新しい造形ではない。だが、「きいちゃん」が他の多くのイメージキャラクターと異なる点があるとすれば、観客参加型展示によって、「きいちゃん」に手が加えられていくことだろう。訪れた観客はそれぞれの「きいちゃん」の表情を作り、壁面へと展示することができるのである。
まるで本展は「きいちゃん」に会いに来た来場者たちが「きいちゃん」を手塩にかけて見つめ、育てることで展示空間が成立するかのようである。観客たちの作る「きいちゃん」たちによってギャラリー空間がすべて埋め尽くされたその時、「大阪は元気だ」と言えるのかもしれない。ぜひ、1人でも、友人・恋人と、ご家族と、あるいは、学校の学外授業、新入社員の新人研修の一環として、「きいちゃん」に会いに来てはどうだろうか。「大阪をもっと元気に」するために。  なお、「北川一成展」は<MULTIPLE IMPACT=Issay Kitagawa>として、同時期に関西4ギャラリーで同時多発開催される。興味と時間があれば以下も合わせてご覧頂きたい。 ・dddギャラリー<大阪>:3.23(火)-5.12(水) http://www.dnp.co.jp/gallery/ddd/index.html ・mihoproject studio yu-an <京都>:4.20(火)-5.15(土) http://web.kyoto-inet.or.jp/people/yu-an1/ ・成安造形大学ギャラリーアートサイト<大津>:4.20(木)-5.15(土) http://www.seian.ac.jp/


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