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額田宣彦:暗順応
展覧会
執筆: カロンズネット編集   
公開日: 2010年 3月 11日

《strings ( 9-3 )》  116.7x116.7cm ( 50S)|oil, egg tempera on linen 画像提供:ギャルリー東京ユマニテ copy right(c) Nobuhiko NUKATA

額田宣彦 (ぬかたのぶひこ) は1963 年大阪生まれ。’91 年、愛知県立芸術大学大学院修了後、’99 年には助成を受け、ロンドンに滞在。その年、アメリカ、ヨーロッパを巡回して日本の若手作家を紹介する大規模な展覧会“Painting for joy”(国際交流基金主催)に出品。その後も国内外の展覧会で発表を続けました。昨年は愛知県美術館で開催された「放課後の原っぱ櫃田伸也とその教え子たち」でも新作を発表。そのシンプルでストイックな作品は、好評を博し、現在では常に注目を集める作家の一人として活躍しています。 額田の代表的な作品のひとつ「jungle-gym シリーズ」は均一に塗られた下地パネルの上に、単色の線画を行なった作品で、一見にはCG のようですが、実際にはマスキングテープなどを一切使わず、フリーハンドで延々と画面にグリットの形を積み上げていきます。また近年の作品は、エッグテンペラと油絵具で、麻布の布目に沿って描かれるような究極の技法にまで到り、1年半前になる前回の個展では、白を基調にシンプルで緊張感と同時にどこか虚無感さえ漂う作品を発表しました。額田は絵画を描くための色彩の組み合わせ、描くシステムという方法論を越えて、作品にさらなる深みを与えることができたといいます。 そして今回の新作では、真っ白な画面の四隅に単色を乗せたもの、いわゆる作品の号数を変えた組み合わせに直線を引いたもの、地色の上にやっと見えるか見えないかの拙い一本のラインがあるもの、など作品は究極を極めました。一瞬、手がかりを探そうとする観る者の思いを覆す意図は、落ちどころなく不安をただ掻き立てるだけですが、その印象はどこまでも強く、絵画という存在を超えて私たちの奥底に侵入してきます。その現象こそが額田が企てた仕業といえるでしょう。 今回は1年半ぶりの新作展になります。額田絵画の新たな展開と、その「罠」を充分に堪能していただける空間が今回も用意されました。この機会に是非ご高覧下さい。

作家コメント
私は近年「絵画であって絵画でないような絵画」を描きたいとコメントしました。その真意は、形式主義的な立場からの発言ではなく、そもそもの絵画が成立する条件を、より広く、この世界を含め、捉えなおし解釈することで、新たな絵画観を見出したいという意図があります。私は今回の新作展タイトルを「暗順応-dark adaptation-」と付しました。出品作の多くは非常に単純な要素で構成しています。そのシンプルさは一見、具体的な見所がなく、どこに照準を合わせ、どう解釈し、観賞すればよいのか迷うかもしれません。しかし、ほんとうの意味で、「視る」ことによって核心部にピントが合ってくるのは作品との対峙後にあるのではないか、私は、観者が作品と対峙し終えた後、つまり「日常」に戻ってから、より深く作品に順応することを期待します。「対峙中」から「対峙後」そしてまた「対峙」、その終わりなき区間を考慮し制作することが、私の絵画にとっては非常に重要です。このような考えを、今回の新作展では、明快に表出できたのではないかと思っています。

額田宣彦 NUKATA Nobuhiko
1963 大阪府生まれ
1988 愛知県立芸術大学美術学部油画科卒業
1990 愛知県立芸術大学大学院美術研究科修了
1999-2000 ポーラ美術振興財団の助成によりロンドン滞在 主な個展:
1995, ’98 ギャルリーユマニテ(名古屋、東京)
1995 水戸芸術館現代美術センタークリテリオム(茨城)
1999 ギャルリーユマニテ(東京)
2001 オン・ギャラリー(大阪) エキジビションスペース・東京国際フォーラム(東京)
2001, ’03, ‘06, ’08, ‘10 ギャルリー東京ユマニテ(東京) パブリックコレクション:
東京オペラシティアートギャラリー 東京国際フォーラム 国際交流基金 豊田市美術館 岡崎市立美術博物館 ※全文提供: ギャルリー東京ユマニテ

 

最終更新 2010年 5月 17日
 

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