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内藤礼:すべて動物は、世界の内にちょうど水の中に水があるように存在している
展覧会
執筆: カロンズネット編集   
公開日: 2010年 1月 12日

《精霊》2006年 Courtesy: ギャラリー小柳/Photo: 畠中直哉 画像提供:神奈川県立近代美術館 鎌倉

空間を満たす光、空気の揺らぎ、周囲の音--造形を取り巻く要素を作品の場へと呼びこむ、現代日本を代表するアーティストのひとり、内藤礼(1961- )。1980 年代の後半から、「地上の生と世界との連続性」をテーマに、糸や布といった繊細な素材と、光や水などの自然の要素を、ひそやかな、それでいて確かな存在感を放つかたちに昇華させてきた彼女の作品は、国内外で静かな熱狂を呼んできました。

今回の個展は、ジョルジュ・バタイユが『宗教の理論』に記した一節をタイトルとし、内藤礼が、鶴岡八幡宮境内のモダニズム建築として名高い神奈川県立近代美術館の鎌倉館に、新作を中心とするインスタレーションを行うものです。

展示室の閉ざされた空間と、館外の自然が交錯する中庭や彫刻室。鎌倉館独自の環境に置かれた作品群には順路が定められていません。その作品は、建物と屋外を経巡るひとりひとりの時間のなかで、かつてあった/未だ生まれざる世界の記憶を呼び起こし、見る人の生の時間と交感することでしょう。自然そのものを素材にする近年の仕事に加え、10 年以上の時を経て電球光がふたたび取り上げられて、本展での制作が、これまでの時間を遡りながら、同時に新しい段階への移行を告げるものとなることを予感させます。

「水の中に水があるように」。世界と等質な全体性の奪回を希求する内藤礼が、鎌倉館にどのような作品を生み出し、また作品を媒介にどのような世界とのつながりを示してくれるのか、大きな期待が寄せられています。

※全文提供: 神奈川県立近代美術館


会期: 2009年11月14日-2010年1月24日

最終更新 2009年 11月 14日
 

編集部ノート    執筆:小金沢智


暗く、豆電球が灯る展示室。そこであなたは展示—ケースにも入ることができる。テキスタイルが敷かれた展示室。あなたはそこで一枚の紙を手にする。それにはきわめて小さく文字が印字されている。反転しているから注意深く読んで欲しい。そうして降り立つ一階では、ひらひらと中空に浮かぶものがある。きらきらと空間を切り取るものもある。それらの素材は特別なものではない。見慣れた空間を一変させる、見慣れたものを使った作品がそこかしこにある。 神奈川県立近代美術館 鎌倉はこれほどに「広い」空間だったか?板倉準三の設計によって一九五一年に完成した本館は、六十年近く経った今の目線から見れば決して広くはない。一階の一部も耐震性の問題のため使われていない。にもかかわらずこれほど広さを感じさせるのは、内藤礼の傑出した空間処理能力が成せる技だ。展示室に足を踏み入れれば、途端に内藤の世界に引き込まれるだろう。


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