美術がまちに繰り出す |
展覧会 |
執筆: カロンズネット編集 |
公開日: 2009年 12月 03日 |
鋳物工場での美術展×アトリアでのシンポジウムこのところの社会の変化の多くが、かつて経験のないことばかりです。100年に一度と言われている経済危機、先祖代々経験していない水害など、社会的なことだけでなく自然環境の面でも、未経験なことが起きています。このようなありがたくない新たな歴史に加え、気候変動といった個人の力では抗しがたい問題からも、我々の不安はますます増大します。 しかし、希望があれば、明るい未来を感じることができれば、明るい未来のために活動することができれば、我々は不安に打ち勝つことができます。 これまで、文化・芸術は、経済的生産や生理的安全の外の活動、いうなれば「余暇」の範疇に位置づけられがちでした。しかし過去の災害からの立ち直りに観られるように、人々の創造的な力が社会を立ち直らせ、未来を築いてきたことを忘れてはなりません。疲れ果てた体と頭を休め、心をいやし、新しい発想で動き始めることこそが未来を創り出すエネルギーなのです。 芸術・文化は一部の人たちの活動だけではなく、我々全てに備わっている力です。この不安な時代から未来を見いだしプログラムを創造することを放棄し人任せにしている限り、不安からの脱出はなく不満のみが蓄積していきます。 いまこそ、創造的な発想が、創造的な生き様が必要なのです。このシンポジウムでは、創造する人、創造する街、を創るために、創造とは何か、創造する人を育てるにはどうするか、創造の場とはどのようなところか、といった切り口から、創造的な活き活きしたまち造りの方法を考えてみたいと思います。 出展作家:佐藤裕一郎 ※全文提供: 川口市立アートギャラリー・アトリア |
最終更新 2009年 11月 27日 |
「美術がまちに繰り出す 鋳物工場での美術展×アトリアでのシンポジウム」は、埼玉県川口市、SMFアートのわっ!実行委員会主催による文化事業。美術展とシンポジウムの二本立てで、「創造」について思考する場を作ろうと試みている。シンポジウム(2009年11月28日)には参加できなかったが、鋳造工場で開催された美術展を見ることができた。 出品作家は、画家の佐藤裕一郎。佐藤はギャラリー58での個展や「META Ⅱ」展の参加などで精力的に大作を出品している作家であり、山形県出身だが現在は川口市に住み制作を行っている。会場である芝川鋳造は今年で創業90年になり現在も稼動する工場で、佐藤の作品が展示されているのも工場内である。旧作から三点が展示されている。 展示のため内部に無造作に置かれていた金型を整理し、作品をその上に置くなど意欲的な試みも行っているが、何より驚くのは、作品が場の空気と調和しているということだ。時間の経過という非人為的な要素によって工場内に深く染み込んだ油の匂いや色が、意図的に〈きれいな〉画面から逸脱するかのごとき作品を制作している佐藤の作品とシンクロし、〈美しい〉光景を作り出している。写真を交えた展示の詳細は後日レビューで報告するが、可能な限り会場に足を運んで作品を体験して欲しい展覧会である。