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Blank Space
展覧会
執筆: カロンズネット編集   
公開日: 2009年 11月 20日

≪Blank Space≫画像提供:ポーラ ミュージアム アネックス

≪Blank Space≫画像提供:ポーラ ミュージアム アネックス

本展は、130,000 個のLED を使って構成されるポーラ銀座ビルのファサードの設計を手がけたライティング・アーキテクトの豊久将三氏による、光のインスタレーション作品をご紹介するものです。

人が光を認識するとはどういうことか? その原点をみつめ、人の眼と脳の根源的な関係性を問い直す画期的な企画です。 ファサード(ビル表面)から発せられる光を意識しながら、ギャラリー内に3つの異なる光のアートを展開します。

ヒトの眼の網膜には、2種類の視細胞がほぼ一面に並んでいる。このうち桿体(かんたい)細胞は、感度は高いが色の判別はできない。一方の錐体すいたい細胞は、感度は低いが色の判別ができる。

錐体細胞にはさらに、青、赤、緑、それぞれの色の光を受容する3種類の細胞がある。それぞれは、”青色光を受容する錐体細胞”・”赤色光を受容する錐体細胞”・”緑色光を受容する錐体細胞”である。

光の色に関して考えると、白色光は様々な色(青・赤・緑)の光が混ざったものであるため、”白”を見るためには3種類の錐体細胞の全てが反応しなければならない。ところが、この錐体細胞からの指令が脳に伝わる段階で、錯覚が起こる事がある。

例えば、”赤”をしばらく見つめていると、赤色光を受容する錐体細胞だけが反応し続けて疲労してしまうため、赤を見続けた後すぐに”白”を見ると、他の2つの錐体細胞だけが反応して、”赤”の補色の”青緑”に見えることとなる。

これを錯覚とするか現実とするか、作品を体感し脳に問いかけていただきたい。
-豊久 将三

豊久 将三(とよひさ・しょうぞう) ライティング・アーキテクト。
1960 年生まれ。主に美術・博物館の光の計画を制作とともに行う。ニューヨーク近代美術館での「CONTEMPORARY JAPANESE TEXTILES」展における光ファイバーを使用した照明で世界的な評価を得る。現在までに、セントルイス美術館、モントリオール現代美術館、森美術館、ポーラ美術館、原美術館、ハラミュージアムアーク觀海庵、根津美術館、三菱一号館美術館などの展示照明とともに、ニューヨークを中心に個人コレクターの自邸の照明も数多く手がける。収蔵作品や美術館建築の空間に合わせて、毎回、オリジナルの光を創る事が一貫したコンセプトとなっている。

※全文提供: ポーラ ミュージアム アネックス

最終更新 2009年 11月 07日
 

編集部ノート    執筆:小金沢智


銀座はトップブランドや百貨店の華やかなビルが軒を列ね、とりわけ夜のイルミネーションが私たちの目を楽しませてくれるが、今回の展示はPOLA銀座ビルのファサードの設計を手がけた豊久将三による体験型インスタレーションだ。同ビルは13,000個ものLEDが使われているとのことで、作品もまた「光」に関するものになっている。 鑑賞者は順にある一室に通され、そこで約五分間椅子に座ったまま、音声による作品説明が流れる中目の前で刻一刻と変化する光を体験する。それは「人が光を認識するとはどういうことか?」と視覚それ自体を考えさせる作品であり、試みとして大変興味深い。だが、音声による説明はすべて英語であり、英語に弱い私はほとほと疲れてしまった。説明がなければそれはただのイルミネーションであり、その意味で説明は作品の意図するところを補完する非常に重要な要素だと言えるだろう。それゆえ、作家は日本人であり、いくら銀座に外国人が多いといってもここは日本であり、なぜこの作品が英語でガイドされなされなければならないのか私は皆目わからない。残念ながら、きわめて不親切な展示であると言わざるを得ない。


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