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田村久美子:OUT OF THE MOUNTAIN
展覧会
執筆: カロンズネット編集   
公開日: 2009年 11月 18日

画像提供:アイショウミウラアーツ

田村久美子の作品にとってのキーワードは、「ポータブル(持ち運び可能)」という感覚だ。携帯電話がいつ、どこでも、グローバルに人を繋ぐ情況にあって、田村は自ら制作したポータブルなコミュニケーションツールを通して、人と人とのあいだにローカルなコミュニケーションを開く。それは一種の「見立て」に近い行為かもしれない。つまり、田村の作品が鑑賞者に触れたとき、それがごくごく小さいキューブであったとしても、地平線をかたどる平面作品であったとしても、作品が立ち上がる瞬間には、ぽっかりと広がった、大きな想像の空間が生まれるのである。現在でも、日本人がある種の「神」を意識する際には、神そのものを崇めるのではなく、その神体の前に穀物や酒、一本の木や鳥居、社(やしろ)を置く。そういった「お供えもの」と関わり、「お供えをする」という行為から、人、人ならざるものとのコミュニケーションが開かれる。これは非常に個人的(ローカルな)行為を発端にしながらも、結果としてヒト以外のものまでとも繋がることのできるコミュニケーションになる。幼いころ、カケルモノを手にしながら日本の自然の中を遊び続けた田村の作品は、どこにでも持ち運び、どこにおいても様々な回路を開くものとして存在する。

田村は約3年ぶり2度目の展覧会となります。これまで描かれてきた一連の地平線シリーズの集大成となる展覧会になっております。

※全文提供: アイショウミウラアーツ

最終更新 2009年 11月 17日
 

編集部ノート    執筆:平田剛志


絵に厚みがある。描かれた油絵の量塊のことではない。キャンヴァスのことである。本展で展示されている田村の絵画は7~10cmの厚みある正方形のキャンヴァスに、都市や自然の光景が地平線を2分割した画面構成によって描かれているのである。 それらを、屏風絵を見るように身体の向きを左右に変えて見てみる。すると、風景がキャンヴァスの側面まで描かれているため、立体的に風景が立ち現れるのである。平面でありながら、立体としても存在する田村の「絵画」は、かつての屏風絵のように空間に奥行きを与える絵画空間を存在させることに成功している。 しかし、平面といえども「立体」であり「物質」であることに変わりはない。田村は支持体を厚みある正方形のキャンヴァスにしたことで、屏風絵とは異なり、視覚的に一望できる立体的絵画を創造したのだ。と同時に、地平線上に広がる風景の一部を切り取ったような光景は切断と連続性が与えられ、地平線はキャンヴァスを越えて広がりだす。 このように絵画と身体の関係性によって成立する展示のため、写真ではわかりづらい。実際の作品を厚みある空間で体感してほしい。


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