展覧会
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執筆: カロンズネット編集
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公開日: 2009年 11月 18日 |
人の気配を宿すモノを題材に、ピンクを基調とした色彩で、柔らかく湿度の高い空間を表現する長谷川。昨年の個展「キラり」より約1年ぶりとなる今回、彼女の意識は自身を取り巻くモノたちの静かで圧倒的な存在感へと向けられている。
身体を包むような大きさに対して、体温を守る蚕の繭や鳥の巣、防御するためのシェルターのような安心感を覚えると同時に、締め付けられ手足の自由を奪われ、呼吸を塞がれ窒息させられてしまうような怯える思いがあるのです。
大きく膨らんだシーツや布団、窓を覆うカーテン、人がすっぽりと入ってしまいそうな箱。それらは温かく包み込んでくれそうでいて、同時にゆっくりと呑み込まれそうでもある。室内という閉じられた空間における、柔らかな安心とその裏側にあるそこはかとない不安を、長谷川は描き出す。
私は外側に拡散するのではなく、内側に向かって渦を巻く求心的なエネルギーに興味があり、ありふれた生活の情景に温かい包容力と内にこもる力の静かな凶暴さを見て、作品をつくろうとしているのかもしれません。
身の回りのモノを描いてきた長谷川は、自身の絵は「家の中から出られない」と言う。彼女の意識を家という「殻」の中に留め続けるのは、そこに身を寄せるモノたちが時折見せる温かくてしたたかな二面性なのかもしれない。
※全文提供:YOKOI FINE ART
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最終更新 2009年 12月 11日 |