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鈴木まさこ:ZOO-M
展覧会
執筆: カロンズネット編集   
公開日: 2009年 11月 02日

画像提供:フォイル・ギャラリー copy right(c) Masako SUZUKI

昨年9月に弊廊で開催されました個展では、鈴木がテーマとして描き続けている、動物をモチーフにした作品を中心に展示し、細密に描かれた絵に宿る壮大なスケールで見る者を圧倒しました。

彼女の描く動物や植物たちは、顕微鏡で細胞を覗き見ているかのような、無数の細かな円や線の集合が、幾重にも重なって描かれています。その密度の濃いディテールは、あらゆる小さなものの集まりがこの宇宙であると同時に、そこで生きる私たちの生命ひとつひとつの中にもまた、無限の宇宙の広がりが存在するということを露にします。

これまで彼女の表現はモノクロのものが多かったのですが、前回の展示からここ一年程、徐々に色のある表現に移行しつつあります。一枚の絵に色が加わることで更に、生の果て無さがその命の中に収まりきらず、宇宙へと広がっていくような感覚を、より強く感じさせるものへと変化してきています。

彼女の作品と向き合ったとき私たちは、そのエネルギーに満ちた生命のうごめきと、迫り来る恐れを感じずにはいられないでしょう。

今回は新作を中心に、本展に併せて刊行されます初の作品集『ZOO-M』の世界観を展示でも表現しようと、前回の整列された美しさとはまた異なる、自由な、力強いエネルギーが感じられる展示を予定しております。

全文提供: フォイルギャラリー

最終更新 2009年 11月 06日
 

編集部ノート    執筆:平田剛志


細密表現による絵画はテクニックのわかりやすさ、その具象性ゆえに注目度が高いようで、冨谷悦子、増子博子など続々と現れている。鈴木の作品もまたそういった文脈で語られるのかもしれない。だが、どこか鈴木の絵画には細密表現特有の技巧性やミクロな世界観の開示とは異なる気配がある。細かな円や線が集積して描かれる動物たちは、どこか飄々として見えるし、密度ある画面を見ることに息が詰まる手前で「余白」が目の緊張を逃がしてくれるからかもしれない。そして、今展の作品からは色彩が加えられたことで、柔らかさが付与され、鈴木の作品をただの細密な作品とは少し異なる印象を与えるのだ。


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