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異界の風景
展覧会
執筆: カロンズネット編集   
公開日: 2009年 10月 21日

東京藝大油画科の現在と美術資料


画像提供:東京藝術大学大学美術館

東京藝術大学絵画科油画の企画する「異界の風景」展は、油画現職教員14名の作品約70点と東京藝術大学大学美術館収蔵の作品約100点によって構成される展覧会です。

「異界」を創造行為が発生する場をさす概念と定義し、表現が生まれる媒介となる「風景」を提起する試みです。東京藝術大学大学美術館の収蔵作品に対して、油画現教員作家が油画において推し進める創作、研究、教育からの新たな視点によるアプローチを提示し、相互作用に基づく制作・展示を行います。

江戸後期から明治期にかけて、独自の好奇心と大胆な解釈とともに進められた遠近法の導入や、西洋画技法の解読によって描かれた実験的な風景画を現在の視点で読み替えることを試みます。

また明治期から現代に至る絵画作品を西洋の技法、思想を消化しながらも、いかに眼前の風景-日本の風土-と対峙し、模索して「風景」を組み立てていったのかという表現の方法論を検証します。

この「異界の風景」展が未だ描かれていない21世紀の風景に出会う契機となることを願うものです。

※全文提供: 東京藝術大学大学美術館

最終更新 2009年 10月 02日
 

編集部ノート    執筆:小金沢智


東京芸術大学の所蔵作品と教職員の作品を組み合わせた展覧会。冒頭から展示されるコレクションはなるほど東京芸術大学の歴史の厚みを感じさせるに十分であり、さらに教職員の作品を組み合わせて展示することで一つの展覧会を作り上げようという試みは面白い。しかし、わかりにくい順路や誰が書いたか不明な解説パネルなど鑑賞しにくい展示構成は否めず、セレクトされた作家/作品の質の程度も甚だしいため、美術教育の場も教職員の政治的な思惑の跋扈する「異界」なのではないかと想像しないではいられない。 そんな中、唯一アクチュアルな作品を出品していたのが中村政人である。展示室から一歩ひいた場所、螺旋階段や休憩コーナー(?)に流れているビデオは、中村が1997年から行っている≪美術と教育プロジェクト≫の、美術関係者へのインタビューを映したものだ。作家や教育者、評論家など多くの美術関係者が語るそれぞれの「美術」の「教育」論は貴重なアーカイブであり既に数冊の書籍にまとめられているが、映像を見る機会はそうないのではないか。 さらに中村による作品を紹介しよう。最後の展示室前には透明のボックスが置かれ、中には黄色い粘土が入っており、その横にはこう書かれた看板が置かれている。「日本の美術教育を変えたいと思う人は、螺旋階段から黄色の粘土を一つ落としてください」。投げ落として会場を後にした。


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