| EN |

アキバタマビ21 第71回展覧会「さよならに、塩と胡椒」
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2018年 9月 02日

フライヤー

【展覧会内容】

わたしたちが様々な場面で口にする「さよなら」は、伝える相手、場所、状況によって多様な意味が込められています。それらには共通して、「さよなら」を伝えることで他者を不在にし、共有した時間を自身の解釈によって、唯一の「味」を持った記憶へと変化させていると考えます。そして、その記憶は自らの身体に刻まれ、体験として蓄積されていくでしょう。

一方で、わたしたちの社会は情報化がさらに加速し、クラウドコンピューティングをはじめとして、あらゆる情報は電子化され、情報を保持していた本体ではなくインターネット上に蓄積されるようになりました。言い換えれば、物質から切り離された情報は、いわばオーラや魂となって、私たちの身体の周りに幽体的な状態で保存されているとも言えるでしょう。その状況は、スマートフォンやタブレットといった液晶画面を持つ媒体から、いつでも・どこでも情報を呼び出すことができる代わりに、情報を召喚するために画一化された物質だけを、わたしたちは求めるようになっているのかもしれません。

それに対して美術作品は、作者による様々な記憶が物質に内包されています。作者がこれまでに出会った人やもの、風景、出来事に告げた「さよなら」が、表現によって濃密な「味」を持った形となり、見る人の中にかつてあったもの、不在のありかを認識させます。見る人は作品に込められた「味」と自身がかつて体験した同じ「味」を探り、その時に味わった感覚をより強固なものとして、自身の記憶と身体に刻み込みます。それは、物質に情報を宿す上で、存在意義を見出すための重要な行為なのではないでしょうか。

本展は、記憶の定着を客観的・直接的な記録が難しい「味」と結びつけ、4人の作家がそれぞれの作品に込めた「さよなら」を、鑑賞者が味わうことで不在だった記憶を呼び起こし、作品固有の体験として再認識することで、現代の幽体化した情報の所在を明らかにします。それは、情報が膨大になったがゆえに埋没し、均質化してしまった現代にとって、実体性を捉え直す有効な手段となるでしょう。それぞれの作者が、作品を生み出す時に告げた「さよなら」を、ゆっくりと味わってください。


【出品者名】
○黒田翔太 Shota KURODA
1991年群馬県生まれ。東京理科大学理学部第一部数学科卒業。名古屋大学大学院多元数理科学研究科在学。作曲、即興演奏、DTM等の音楽活動の他、プログラミングや数学を通して表現を模索する表現開発者。問いの発明をテーマとしている。TRANS ARTS TOKYO 2013や、出身地である川場村冨士山集落など様々なアートプロジェクトに関わる。


○近藤 南 Minami KONDO
1990年富山県生まれ。2013年武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒業。陶を主に様々な素材を用い、自身の見た夢と現実の狹間の出来事を彫刻作品に変換している。主な展覧会として、個展「ゆめか うつつか まぼろしか」(2015年・Hasu no hana/東京)、美術手帖presents「シブカル杯。」(2015年・渋谷PARCO/東京)、BankARTアーティストインレジデンス2016(2016年・BankART Studio NYK/横浜)、 SHIBUYA AWARDS 2017(2017年・東急東京メトロ渋谷駅コンコース/東京)SHIBUYA AWARDS 2017 ART部門 受賞作品展(2018年・Bunkamura Wall Gallery/東京)など。2015年第13回「1_WALL」グラフィック部門審査員奨励賞(白根ゆたんぽ選)、2018年SHIBUYA AWARDS 2017 綛野匠美賞受賞。


○杉岡みなみ Minami SUGIOKA
1990年東京都生まれ。2014年多摩美術大学造形表現学部造形学科(日本画)卒業。2016年多摩美術大学大学院美術研究科絵画専攻日本画研究領域修了。人物をモチーフに、絵画を通して「他者との境界線」を表現する。主な展覧会として、個展「まぶたのきみ」(2015年・木之庄企畫/東京)、「アイトピア・ミュージアム」(2016年・みやぎ生協会館/石巻)、「60の顔」(2017年・麗人社ギャラリー/東京) 、個展「昨日の光」(2018年・GALLERY b. Tokyo/東京)など。


○高山夏希 Natsuki TAKAYAMA
1990年東京都生まれ。2016年東京造形大学大学院造形研究科美術専攻領域修了。近代的な生活様式とは一線を画する人々の、動物や自然環境との関係を考察する。そうした考察の場を、鑑賞者を巻き込んだ「環境」として設定することで、自然と動物と人間が一体化した世界観を提示している。主な展覧会として、「Cosmetic Kosmos」(2016年・KOKI ARTS/東京)、個展「絡まり合う距離まで(藤井匡キュレーション」(2016年・sagio/東京)、IDEE Life in Art「space time continuum」(2016年・IDEE SHOP Midtown/東京)、「RIPPLE」(2017年・SLOW HOUSE 天王洲/東京)など。2016年神山財団支援プログラム成果展大賞、2016年アートアワードトーキョー丸の内2016 後藤繁雄賞受賞。



【展覧会詳細】
「さよならに、塩と胡椒」“Flavor with Farewell”
2018年9月15日(土)~10月22日(月)
12:00~19:00(金・土は20:00 まで)、火曜休場


【イベント】
●オープニングパーティー 
9月15日(土) 18:00 ~ 20:00
●トークショー「言葉の匙」
9月22日(土) 17:00 ~ 18:30 参加無料・予約不要
出演:三角みづ紀(詩人)、坂田恭平(本展キュレーター)
●絵画と菊地敦子によるパフォーマンス「肌理/under my skin」
10月6日(土)16:00〜16:30 18:30~19:00
10月7日(日)16:00〜16:30 18:30~19:00 全4回公演
観覧無料・定員50名(ご予約はPeatixにて)https://peatix.com/event/409919
絵・構成:杉岡みなみ 身体:菊地敦子 演出:久世孝臣
●アーティスト・トーク「『さよなら』について」
10月20日(土) 17:00 ~ 18:30 参加無料・予約不要
出演:黒田翔太、近藤南、杉岡みなみ、高山夏希 聞き手:坂田恭平



【展覧会場】
アキバタマビ21
〒101-0021 東京都千代田区外神田6-11-14 3331 Arts Chiyoda 201・202
電話:03-5812-4558
URL: http://www.akibatamabi21.com

アクセス:
東京メトロ銀座線末広町駅4番出口より徒歩1分
東京メトロ千代田線湯島駅6番出口より徒歩3分
都営大江戸線上野御徒町駅A1番出口より徒歩6分
JR御徒町駅南口より徒歩7分
JR秋葉原駅電気街口より徒歩8分

「アキバタマビ21」は多摩美術大学が運営する、若い芸術家たちのための作品発表の場である。ここは若い芸術家たちが、互いに切磋琢磨しながら協働し共生することを体験する場であり、他者と触れ合うことで自我の殻から脱皮し、既存のシステムや権威に依存することなく自らをプロデュースし自立していくための、鍛錬の場でもある――そうありたいという希望を託して若い芸術家たちにゆだねる、あり得るかもしれない「可能性」の場であり、その可能性を目撃していただく場所である。

http://www.akibatamabi21.com

全文提供:アキバタマビ21


会期:2018年9月15日(土) 〜 2018年10月22日(月)
時間:12:00~19:00(金・土は20:00 まで)
休日:火曜休場
会場:アキバタマビ21

最終更新 2018年 9月 15日
 

関連情報


| EN |