| EN |

出和絵理:陶 白き小さき光のかたち
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2009年 10月 13日

≪Core≫(中央奥)2008年|H17×W3×D3cm|撮影:林達雄|画像提供:INAXギャラリー copyright(c) Eri DEWA

出和絵理(Dewa Eri)さんの作品『Core』は、10cm四方の薄い陶片のかたまりで出来ています。真っ白な磁土を紙のように薄くハンドローラーで伸ばした後、一枚のかたちを切り取り、同じもの数十枚つくって重ね、成形します。フワフワと風で飛んで行ってしまいそうな軽やかさ、幾重にも連なったかたちがつくり出す柔らかなムーブメント、光を透過した白い輝きが印象的な作品です。

展覧会場では、乳白色の半透明のアクリル板の上に1つ1つ置かれ、幾何学形態にも似たフォルムは端整で凛とした姿です。

フォルムを追求する出和さんのモチーフは、光や風、植物など自然のかたちです。特にマンタやエイなどの海洋生物の浮遊感は、作品に大きな影響を与えています。また、日常生活で聞こえてくるリズム、例えば心臓の鼓動も作品のリズムをつくることに繋がっていきます。

出和絵理さんは現在、金沢美術工芸大学大学院で、陶芸を学んでいます。大学より陶芸を始めましたが、石川県出身ということもあり、幼少より九谷焼の磁器に親しんでいたので、迷わず磁土で制作を始めます。 転機は大学3年生の時に訪れました。肉親との死別に呆然としていた彼女は、手に持ったいつもの白磁の湯呑が透過して、底に光が射していることに気づきます。それは木漏れ日のようにやさしく、命が灯ったかのように暖かく見えたと話します。

それ以来、透過性をテーマに制作をしています。出和の作品は、『Core』のような小さなものから、幅2mの大きなインスタレーションまで多岐に渡りますが、いずれも清らかで神秘的な印象です。今展では両方の作品が展示される予定です。東京では初めての開催となります。

作家略歴
1983 石川県生まれ
2008 金沢美術工芸大学大学院美術工芸研究科修士課程修了
現在 金沢美術工芸大学大学院美術工芸研究科博士課程在籍

個展: 2008 TONG-IN Gallery(韓国 ソウル)

全文提供: INAXギャラリー

最終更新 2009年 11月 06日
 

編集部ノート    執筆:小金沢智


「陶」と聞くと陶器を想像する。日常づかいの器である。産地によって沢山の呼び名があり、作家によっても様々な作品がある。 一方で、出和の作品は陶土を使っているが器ではない。言われなければ、陶器であるということすらわからないだろう。薄い紙が重なっているように見え、事実重なりが透けて見える。だから手で触れ使う「器」ではなく、「オブジェ」であると言ってしまえばそれで済んでしまうのかもしれないが、それだけで済ませたくないのは作品に触れれば音を立てて崩れ落ちそうなほどの繊細さが認められるからだ。私もその繊細さに倣い、つまらない概念分けで作品の美しさを削ぎ落としたくないと思うのである。


関連情報


| EN |