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「対岸に落とし穴」、その心は!?―神戸アートビレッジセンターで若手アーティスト・キュレーター育成支援企画展
ニュース
執筆: カロンズネット編集   
公開日: 2015年 11月 01日

神戸アートビレッジセンター(兵庫県神戸市・新開地)で、若手アーティスト・キュレーター育成支援企画展覧会『1floor 2015 対岸に落とし穴』が10月31日(土)から11月23日(月・祝)まで開催されている。

この展覧会は、神戸アートビレッジセンターが2008年から実施している若手アーティストやキュレーターの育成支援を目的とした企画だ。第8回目となる今回は、公募で選ばれた二組の作家・川田知志と山城優摩が、特色の違う二つの空間「KAVC ギャラリー」とコミュニティースペース「1room」を活用した展示に挑む。

まず興味を惹かれるのはそのタイトルだ。「対岸の火事」にも通じる他人事感と、人や獲物を陥れるための仕掛けである「落とし穴」は、新進作家とそれを支援する企画に似つかわしくないように思われる。

このタイトルは、ミーティングの中でタイトルを考えていく際に出てきたキーワードをつないでできあがったという。出てきたキーワードの中に距離を表す言葉が多数あり、今回の展覧会を機に初めて出会った作家二人の距離感が合致した言葉が「対岸」だった。悪意を感じさせるかのような「落とし穴」という言葉も、「いたずらに落とし穴を作るのではなく、対岸から川向うを見ていると、そこを歩いている人が消える。何だろうと見つめていると、それは落とし穴かもしれないと気づく。誰が作ったのか、何を意図しているのか分からないそこへの驚きと興味を持って、見つけるというイメージがあります」(神戸アートビレッジセンターの担当者)とのことだ。

ちなみに同育成支援企画展の昨年のタイトルは『またのぞき』、一昨年は『黄色地に銀のクマ ∪(あるいは)スーパーホームパーティー』であった。毎回、何を表しているのか読み解く面白さがある。

次に興味を惹かれるのが、会期中の11月14日(土)に行われる特別企画「ピクニック気分で展覧会を楽しもう!『対岸に落とし穴 ピクニックディ』」だ。ゲストの「ピクニックコーディネーター」・對中剛大氏が、展覧会とピクニックを融合した新しい作品の楽しみ方をプロデュースする。当日は会場内の床に敷かれた芝生の上でくつろぎ、飲食をしながら作品を鑑賞できるという。ピクニックカレーBOXの販売や、ゲストと二人の出展作家によるギャラリートーク「アート&ピクニック」(17:00~、トークは要予約)も予定されている。通常にはない鑑賞方法で、作品が新鮮に見えてくるかもしれない。

ちょっと変化球のタイトルと、趣向を凝らした会期中のイベント、アーティストの組み合わせによる相乗効果を狙ったこの展覧会は、公募で選ばれた若手作家の魅力を何倍にも増幅させて発信しようという取り組みだ。ただスペースを提供するだけではなく、関係者が一丸となって企画を練っていく支援体制がうかがえる。

共に平面出身でありながら、全く異なるアプローチでインスタレーションや立体作品を制作してきた川田と山城。参考画像はいずれも他の場所で展示された近作だが、今回、二人が神戸アートビレッジセンターの「1floor」に触発されてどのような作品を生み出すのか。ぜひ会場で確かめてほしい。

展覧会公式サイト http://www.kavc.or.jp/art/1floor/2015/

展覧会フライヤー

川田知志《夏の○×△》2015年(ハイパートニック・エイジ/京都)撮影:松見拓也

山城優摩《suspender》2015年(鉄、PPテープ、ハンガー、Yシャツ サイズ可変)

最終更新 2015年 11月 01日
 

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