Truth-貧しき時代のアート |
展覧会 |
執筆: 記事中参照 |
公開日: 2009年 8月 08日 |
2008年、リーマンショックによって21世紀初頭の経済を席巻したバブルはもろくも崩壊し、バブル崩壊後の現在のアートシーンには、はっきりとした変化の兆しが見出されます。時代と社会状況を背景としたポスト・バブルのアートが、どのような方向に進んでいくのかを考察するとき、キーワードとなるのは《貧しさ》です。そこには、バブル時代のアートを内側から否定するモーメントが秘められています。 「Truth- 貧しき時代のアート」出展作家のそれぞれにおいて、全体(コンセプト) と部分(感覚的構成要素)の間に生じるアンバランスが、《貧しさ》すなわち空虚をもたらします。しかしそれは、威圧的でも閉鎖的でもなく、鑑賞者を受け入れる大いなる開放性をもち、さわやかですっきりとした精神的快楽の息吹を呼び入れます。この空虚の濃度が高ければ高いほど、そのなかで鑑賞者が味わう自由の快楽は増大します。これらの出展作家によって、わたしたちは、貧しさが豊かさに逆転するということを教えられます。 出展作家 全文提供: ヒロミヨシイ |
最終更新 2009年 8月 01日 |
美術評論家・市原研太郎(1949年生まれ)キュレーションによるグループ展。2008年のリーマンショック以後を「ポスト・バブル」とし、「貧しさ」をキーワードに展覧会を企画している。まだ若い作家を一つのテーマの下に括ってしまうことを歓迎はできないものの、1980年から1986年にかけて生まれた10人の作家の作品は平面、立体、映像とヴァリエーションに富み、石森五朗のインスタレーション的に展示されたペインティングや井上信也の緻密なペン画など、展覧会としての見応えはある。 何をもって「貧しさ」と呼ぶのかについてはカタログに収録されている市原によるテキスト、「貧しき時代のアートは、《貧しさ》を賛美するか?」(『Truth-貧しき時代のアート』hiromi yoshii、2009年)があるため参照されたいが、最終的には「貧しさが豊かさへ逆転する地点へと、われわれは到達した」(p.12)とほとんど独りよがりに締めくくられ、前置きは長いもののキーワードから個々の作品論への展開は決して十分とは言えない。ところでこのカタログがモノクロなのは意図的なのだろうか?社会や歴史を強く意識した企画でありながら、後々の記録として不十分な作りであることが残念である。