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泉イネ:未完 本姉妹 -ある夏まで-
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2009年 7月 31日

画像提供:AKAAKA copyright(c) Ine IZUMI

泉イネは、2000~07年まで紺泉として、本や雑誌からモティーフを切り取り、厚みのあるパネルに精緻に描いた装飾的な画風の作品を作り続けてきました。2008年9月、HIGURE 17-15 casにてインスタレーション作品をメインに開催した展覧会を皮切りに泉イネとして作品を展開し始め、記憶の断片のような物語を紡ぎながら、絵画を軸に空間、関係を繋いでゆく事象を生み出しています。

今回の展示では、2008年9月以降、泉イネが本姉妹をモティーフに制作してきた過程を紹介します。本姉妹6人+従姉妹が持つ“モノ”の断片を、アクリル絵具を使って緻密に制作された紺泉画風の絵画や、本姉妹と関わるようになって泉がチャレンジし始めた油彩の一部もご覧いただく予定です。また、これまでの泉と本姉妹の関係、本姉妹たちそれぞれの関係をとどめてきた写真やモノ、そして3シリーズ中の1作目として販売している本姉妹本の中に込められた事象をインスタレーションとして展示します。本姉妹と従姉妹、隣のおじさんが初めて会した4月開催の “春の宴”(非公開)の様子は今展示で初お披露目となります。この“春の宴”を写真家・澁谷征司が撮影したスライドショーも会場内にて上映致しまします。

架空の姉妹である“本姉妹”とある期間関わりながら虚と実を往来する様を、泉は絵画や空間に刻印する作業を続けています。それを泉は「作品は影である」といいます。言い換えれば、泉は本姉妹やそれにまつわるものを舞台にあげ、光をあてることによって生み出される陰影や文様を丁寧に掬いだしているといえます。この一見私的と思える作業やその作品群は、人と人との必然なる/偶然なる関係性が普遍的であることを示唆しています。さまざまな人との出会いから生まれる幾重もの出来事や感情を鋭く切り取る泉の静謐な視点は、私たちが常に悩み、時にはさらされながらももがく、一人間の芯を問うてきます。それは鑑賞者自身の周囲にも同様にあることで、私たちの生き様を泉は淡々と情熱的に眺めていることに気付くでしょう。

全文提供: AKAAKA

最終更新 2009年 8月 04日
 

編集部ノート    執筆:小金沢智


この展覧会だけ見てもよくわからない、というのが正直なところだ。ギャラリーにはペインティングに加え鉢植えやジョウロ、衣服、写真、ドローイングなどきわめてプライベートに見えるものが配置されており、仮設的な〈家〉の風景が総じて創出されている。その点では個人的には、形こそ違うものの、AKAAKAのトップバッターとして展覧会を行った浅田家を思い出させるものだった。写真集で定評のある出版社が運営するスペースなだけに写真の展覧会を想像してしまうが(事実過去三回は写真の展覧会である)、そうではないものも可能であるということを見せるものだったとも言える。


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