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サーチプロジェクトvol.1 加藤翼:ホーム、ホテルズ、秀吉、アウェイ
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2011年 5月 09日

画像提供:アートエリアB1

アートエリアB1では、当館を通してアートや知の可能性を探求(=search)する新企画「サーチプロジェクト」の第一弾として、関東在住のアーティスト加藤翼の初個展「ホーム、ホテルズ、秀吉、アウェイ」を開催いたします。

加藤翼は、身近な人から道行く人々をも巻き込んで、屋外に設置した巨大な構造体を引っぱり立ち上げるというプロジェクトを武蔵野美術大学在学中の2007年から一貫して行っています。今春、初めての大阪でのプロジェクトとして、大阪市中央公会堂前、大阪城公園、万博記念公園前でのイベントが開催されました(「おおさかカンヴァス推進事業」主催:大阪府)。

そのイベント実施中に東日本大震災が発生し、関東に居を構えながらも大阪での滞在制作中にこの事態と向き合わざるを得なかった加藤とともに、開催の一時延期を決断しました。そして、改めて本展を通じてなにが可能なのかを熟慮し、開催する運びとなりました。

加藤の初個展となる本展では、大震災の翌々日に開催されたイベントで加藤が行ったスピーチの映像を皮切りに、大阪で出会った人々との繋がりから生まれた構造体の造形プロセスを紹介、そして大阪の人々とともに立ち上げた構造体とその映像を展示します。さらには、展覧会場で出会った人々が、ともに力を合わせて立ち上げる体験エリア※を設置し、山車や神輿にも似た協働の達成感を共有していただく場を設けます。

制作過程からイベントまでの一連のプロセスを展覧する本展を通じて、「感動的であること」「勇気ある行動を行うこと」「リスペクトがあること」という加藤の3つの信念、そして、プロジェクトに内在するプライベートとパブリックの関係性や、一人では不可能なことを他者との協働で可能にするコミュニケーションの有り様を模索する加藤の作品世界をご堪能ください。

会場では、被災地への支援として加藤が制作した義援金ボックスを設置し、ご来場いただいた皆さまからの義援金の受付を行います。お寄せいただいた義援金は、日本赤十字社を通じて被災地へ全額寄付いたします。

※体験エリア 展覧会場で出会った方々が、ともに力を合わせ構造体を立ち上げる場です。
【開催日時】毎週土日 13:00/15:00/17:00(1日3回開催)
【定員】各回4〜8名(参加無料・申込不要)
*参加していただける人数には限りがございますので、ご希望の方はお早めにご来場ください。
*開催時間、開催回数は予告なく変更することがございます。
*参加をご希望の方でも、開催上こちらが危険と判断した場合には、お断りさせていただく場合がございます。

【関連企画】
「加藤翼ギャラリートーク」
日時:5月14日(土)15:00〜18:00 (定員50名・参加無料・申込不要)

「クロージングトーク」
日時:7月10日(日)16:30~18:30 (定員50名・参加無料・申込不要)

※その他、期間中の追加イベント等は、アートエリアB1 のチラシやウェブサイトでお知らせいたします。

全文提供: アートエリアB1


会期: 2011年5月14日(土)-2011年7月10日(日)
会場: 京阪電車なにわ橋駅アートエリアB1


最終更新 2011年 5月 14日
 

編集部ノート    執筆:平田 剛志


画像提供:アートエリアB1

    「せーの!」
    メガホンを通して発される合図で、人々がいっせいにロープを引っ張ると大きな家型の構造体がゆっくり倒れ始める。
    これは、箱型の構造体を引き倒すパフォーマンス・プロジェクトを展開し、2010年に森美術館で開催された「六本木クロッシング2010」にも選出された加藤翼の大阪初個展である。今展では、大阪市中央公会堂前、大阪城公園、万博記念公園前で引き倒しプロジェクトが実施された。そのイベントのさなか、3月11日に発生した東日本大震災により、当初3月に予定されていた展覧会の内容を再考し、5月に延期し開催されたのが本展である。
    大きな構造体をその場にいる人々の共同作業によって引き倒す。加藤のプロジェクトをもし名づけるならコミュニケーション・アートと言えるかもしれない。見るより参加する方が望ましいだろう展示だろう。

    だが、加藤の作品には一抹の不安もある。東日本大震災による地震、津波によって家屋が倒壊、流された人々がいる現在、家屋を喚起させる構造体を引き倒すプロジェクトにどんな「希望」や「コミュニケーション」があるのだろう。大きな構造体が大音量で倒れるスペクタクルなプロジェクトは、パブリックな場ににぎわいと一体感を創出することに貢献することは理屈では理解できる。だが、参加する人々の一時の一体感の創出のため作り出される「場」に対して、長く住むための「場」が失われ、仮設住宅で一定期間の生活を強いられる人々がいる現実は、このプロジェクトの根幹を揺さぶる問題と思える。


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