上野王香:ソマチット |
展覧会 |
執筆: 記事中参照 |
公開日: 2009年 10月 21日 |
上野王香はこれまで一貫してコラージュの手法で作品を制作しています。 用いる素材は、紙と糊のみで、主に雑誌などの印刷写真を切り抜いています。上野が「パーツ」と呼ぶ、それら切り抜かれた素材はあくまで部分の域を出ず、自立することはありません。接合され「部位」となるまで、何年もパーツBOXの中で待っているものが多々あると言います。パーツの収集に始まる制作への探求心と、主にハサミを用いての“技”で息を吹き込まれた部位たちは、上野の感性によっていっきに物語をつむぎだします。 初期作品『et cetera about ADAM and EVE』『et cetera about something CINDERELLA lost.』(2002年)では、現存する物語を独自のヴィジュアル展開で追読させる試み「COLLAGE STORY BOOK」を制作。2007年には、チェコ出身の作家フランツ・カフカ、及びその著作からインスピレーションを得た作品によるコンペティション・KAFKA International(ロンドン)にて、作品『THE METAMORPHOSIS』が入賞し、今後の制作活動もたいへん楽しみな作家です。 今回発表する『ソマチット(somatid)』は近年取り組みはじめたシリーズで、作品世界のエッジがより際立ち始めました。1点1点、揺るぎなく出現する“ソマチット”はもちろんのこと、その根底に脈々と連なり、蠢きだす独自の物語性が、他に類をみない作品へ立ち上げています。 物語の世界に深く入り込んでいく面白さや想像する悦びは、日々の生活の中で思いもよらぬ奥行を伴って舞い戻ってきます。その小説的ともいえる体験を、視覚表現で提示する上野作品に引きつけられ、開催の運びとなりました。 個展としての発表は今回が初めてとなります。お話しのはじまり、はじまり。 ぜひその世界をご覧頂きたいと思います。 それは、数百年も雨が降り続いた時代よりはるか昔のお話し。 上野王香(Ooka Ueno, うえのおうか) 全文提供: Port Gallery T |
最終更新 2009年 11月 02日 |