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Published: November 07 2012 |
GALLERY MoMo Roppongiでは11月1日(木)~ 11月17日(土)まで、「絵画の伏線」と題して1980年代の作品を展示致します。 この展示はギャラリーオープン10周年を迎えるに当たって開催する展示「Zeitgeist(時代精神)」に先駆けて開催するもので、ここで取り上げた作家が全て1980年代生まれの作家によることで、彼らが生まれた日本の美術の状況の一端をギャラリーコレクションから概観しようとするものです。 展示作品は零細な個人コレクションからなり、経済的理由など代表的な作家の欠落があることも否定できませんし、この時代の傾向を網羅するものではありません。 1980年代の日本は、1970年代の学生運動が終焉し、無力感を味わった若い世代は転身を図り、バブル経済へと邁進します。日本の美術の世界ではイズムで括れる時代が終わり、一部では美術の終焉を唱える方もいましたが、多様な表現による模索の時代とも感じさせられました。 高松次郎はハイレッドセンターでのパフォーマンスから、影の作品や遠近法の作品を経て、物質性にこだわる作品に移行し、点と線、或いは文字など、個人的な感情を排し自己消滅的な作品を発表し続けて来ました。 しかし1984年に発表された宮沢賢治の絵本のための作品「水仙月の4日」に於いて、有機的な形態を現出させ、その方向性を一変させました。そうした絵画表現は当時多くの批判を浴びましたが、最晩年までやめることはありませんでした。 「水仙月の4日」は抽象的な作品ですが、宮沢賢治の精神性を絵画として再現しようとする意志も感じられ、そこに高松の感情の表出を見、時代の変化を鋭敏に感じ取っているように思えます。 子供の世界では、いじめはこの頃から問題化し始め、90年代に入ってバブルがはじけ、経済の右肩下がりが続く現在まで、その深刻さは増すことがあっても終わることがありません。 80年代の作家はそうした時代に育ち、自己防衛と自己表出のはざまで、眼差しを内と外との間で激しく移動させ、感情の隙間をぬうように生きてきた世代ですが、高松の感情は奈良美智へと移行し、そうした時代の精神を顕著に受け止めた表現となります。 そして「Zeitgeist(時代精神)」で取り上げた80年代生まれの作家は、奈良を起点に始まった新たな表現を受け継ぐものとして取り上げたもので、今回取り上げなかった私たちの作家の多くについても同様のことが言え、私たちのギャラリーの進むべき方向性を示唆しています。 両展示をご高覧いただき、今後ともご支援いただければさいわいです。
全文提供:GALLERY MoMo Roppongi
会期:November 1(Thu.) - 17 (Sat.), 2012 時間:12:00 - 19:00 Closed on Sun,Mon and National holiday 会場:GALLERY MoMo Roppongi
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Last Updated on November 01 2012 |