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今井祝雄:Retrospective- 1 7 才 ~ 2 2 才 -
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2012年 8月 24日

「作品ー隆起」1966 /160x160x57cm 3点組み/アクリル、布、木/1966年 個展 グタイピナコテカ、大阪

今井祝雄は1946年に大阪に生まれ、1964年に17才で初個展を開きました。以来50年にわたり、制作のジャンルもメディアも多岐にわたる作家活動を続けていますが、その最初期の5年間の制作・発表は目覚ましいものでした。

初個展開催時には、すでに具体美術協会(以下、具体)の親子ほども年の違う会員との交流を始めており、その縁で個展会場を訪れた《具体》のリーダー吉原治良に認められ、1964年第14回具体美術展に出展することとなります。翌1965年には《具体》の最年少の会員となり、さらにその翌年にはグタイピナコテカにて個展が開催されました。《具体》で、前衛芸術とは何かを学び、表現の独自性を探求する姿勢を学びましたが、その《具体》での活動と同時に、新進気鋭の作家として数々の展覧会に招待され、一方で自らも発表の場を求めてコンペティションに応募し、シェル美術賞大賞を受賞するなど多方面からも評価を受けました。

今井は白の作家として知られていますが、当時この「白」について今井は、「白は原色に塗られる宿命の色、受け身の色であるのとは逆にあらゆるものを包み込む色である。 又、白はそれ自体として存在する」 と記しています。繰り返しのリズム、膨らませる、切り込む、穴を穿つ、めくる、折ると機智に富んだ仕掛けが施されました。作品に浮かび上がる凹凸が作り出す陰影の妙、そこから表れる多彩な表情、白という色のバリエーションの豊かさに改めて気付かされます。

本展では、初個展の出展作を始め、美術家・今井の最初期にあたる17~22才(1963~1967年)に制作された、初出以来およそ50年振りの展示となる作品を中心に、未発表作品や発表時の部材をベースに今回再制作された作品を含む、約20点を展示します。制作時のまま保管されていた作品は、素材に多少の変色が加わったことで、時代のエネルギーを感じさせると同時に、作家の斬新なセンスをまざまざと見せつけます。今井が若いエネルギーを傾けて制作、発表を果敢に続けた、非常に濃密な時期であったことをご覧いただければ幸いです。

出展作の多くは、本展終了後に海外へ渡ります。そのため国内での最後の展示となる作品も多くあります。天才少年と呼ばれた今井の真骨頂をこの機会にどうぞご高覧ください。

[作家プロフィール]
今井祝雄

美術家。1946 年、大阪市生まれ。もと具体美術協会会員。1966 年、第 10 回シェル美術賞一等賞受賞以
来、パリ、シドニーのビエンナーレ展はじめ内外の展覧会に立体・ビデオアートなど出品多数。新大阪駅
前や関西文化学術研究都市ほかにパブリックアートを制作。住吉万葉歌碑、永田耕衣文学碑も手がける。
1979 年から毎日の自写像を継続、四半世紀分をまとめた DVD と写真集『デイリーポートレイト―四半世
紀・記憶の日記』(スタジオ・ワープ)、『白からはじまる―私の美術ノート』(ブレーンセンター)など著
書も多い。

1946 大阪生まれ
1964 今井祝雄個展 - 17 歳の証言 ( ヌーヌ画廊 / 大阪)、第 14 回具体美術展 ( 高島屋 / 大阪 )
1965 具体美術協会会員(1972 年解散まで全展出品)
1966 第 10 回シェル美術賞展1等賞(東京、京都)、空間から環境へ(松屋 / 東京)、
ヌル 1966(オレッツ国際画廊 / デン・ハーグ ; オランダ)、現代美術の動向
(国立近代美術館 京都分館)、個展(グタイピナコテカ / 大阪)、
1967 第 5 回パリ青年ビエンナーレ(パリ市美術館)、第 1 回草月実験映画祭(東京、大阪)
1968 現代の空間’ 68- 光と環境(そごう / 神戸)
1970 万国博美術展(万国博美術館 / 大阪)
1972 3 人の心臓音による街頭イベント(御堂筋 / 大阪)、映像表現’ 72(京都市美術館)
1973 京都ビエンナーレ - 集団による美術(京都市美術館)
1975 インパクトアート・ビデオアート’ 74(ギャラリーインパクト / ローザンヌ;スイス)
1976 日本の現代作家展 - デュシャンを透して…(ギャラリー・ペテ / 大阪、関西日仏学館 / 京都)
1979 毎日の自写像『デイリーポートレイト』開始
1980 ビデオ・ローマ’ 80(ローマ民俗美術館 / イタリア)
1982 第 4 回シドニービエンナーレ(オーストラリア)、新大阪駅前に『タイムストーンズ 400』制作
1983 現代美術による写真(東京国立近代美術館および京都国立近代美術館)、今井祝雄 - 矩形の時間
(ギャルリーキタノサーカス / 神戸)
1985 現代のセルフポートレート(埼玉県立近代美術館)
1986 日蘭ビデオ 4 人展(大阪府立現代美術センター)
1988 日本先端科技芸術展(台湾省立美術館)
1989 河原温と同時代の美術 1966-1989(ICA 名古屋)
1992 関西文化学術研究都市モニュメント『トキの球』『ヒトの球』(京都府精華町)
1993 具体 III 1965―1972(芦屋市立美術博物館)
1994 時間 / 美術 - 20 世紀美術における時間の表現(滋賀県立近代美術館)、
戦後日本の前衛美術(横浜美術館)
> この後、グッゲンハイム美術館、 サンフランシスコ近代美術館を巡回
1996 BACK & FORTH 今井祝雄・白の空間 1964-1966(ギャラリー 16/ 京都)

1997 <私>美術のすすめ - 何故 WATAKUSHI は描かれたか(板橋区立美術館 / 東京)
2000 震災と美術 - 9・17 から生まれたもの(兵庫県立近代美術館)
2001 京阪天満橋駅ホームに『ここから、ここへ』制作
2002 今井祝雄 - とき曼陀羅(スタジオ・アーカ / 大阪)
2003 素材としての水、主題としての水(成安造形大学 / 大津 ; 滋賀)
2004 結成 50 周年記念「具体」回顧展(兵庫県立美術館)
6 人の作家―アーティキュレーション 2004( アートコートギャラリー / 大阪 )
2005 今井祝雄-デイリーポートレイトの四半世紀(夢創館 / 神戸)
2006 マイ・ルール - わたし時間の集積(ボーダレス・アートギャラリー NO-MA/ 近江八幡 ; 滋賀)、
ラディカル・コミュニケーション : 日本のビデオアート 1968-1988」
(ゲティセンター / ロサンジェルス)
2008 YEBESSAN- 今井祝雄〈分身の術〉(アトリエ風姿花伝 / 西宮;兵庫)
2009 今井祝雄-白のうちそと(楓ギャラリー / 大阪)、
ヴァイタル・シグナル―日米初期ビデオアート(ジャパンソサエティ / ニューヨーク、
ボストン美術館、横浜市美術館、国立国際美術館ほか~ 2010)
2010 かたちのちから - 高度成長期の美術篇・大阪市立美術館コレクションを中心に
(大阪市立近代美術館 ( 仮 ) 心斎橋展示室)
2011 今井祝雄 - フレーム考(LADS ギャラリー / 大阪)、今井祝雄 - フレーム・イン(CAS/ 大阪)、
Nul=0. dutch avant-garde in an international context, 1961-1966
(スキーダム市立美術館 / オランダ)
Masked PortraitⅡ-When Vibrations Become Forms
(マリアン・ボエスキー・ギャラリー / ニューヨーク : ~2012)
2012 今井祝雄 - フレームの彼方(ギャラリーパルク / 京都)
今井祝雄 “具体大学” のころ(成安造形大学 / 大津;滋賀)
「具体」ニッポンの前衛 18 年の軌跡(国立新美術館 / 東京)
今井祝雄 “具体大学” セレクション(LADS ギャラリー / 大阪)
Visual Essay on Gutai at 32 East 69 Street (Hauser & Wirth / ニューヨーク)
再生ーメイド・イン・ジャパン(KUNST ARZT / 京都)
よむこと・紙出来(ギャラリーパルク / 京都)
【今後の展覧会予定】
2012 水のメディア芸術祭̶Aqua Passage(しが県民芸術創造館 / 草津 ; 滋賀)
2013 具体:素晴らしい遊び場(Gutai: Splendid Playground)2 月 15 日~5 月9日予定
(グッゲンハイム美術館 / ニューヨーク)
【著書】 『白からはじまる―私の美術ノート』(ブレーンセンター)
『デイリーポートレイト - 四半世紀・記憶の日記』(スタジオワープ)
『オン・ザ・テーブル - パフォーマンス・イン・ブック』(樹花舎)、他。

【関連イベント】
▶トークイベント: 10月13日(土)15:00~16:00 / 今井祝雄 x 平井章一氏(京都国立近代美術館 主任研究員)
▶レセプション:   〃 16:00~18:00

全文提供:アートコートギャラリー


会期:2012年10月9日(火)~2012年10月27日(土)
時間:11:00 ~ 19:00 (土曜日 ~17:00)
休日:日・月・祝
会場:アートコートギャラリー

最終更新 2012年 10月 09日
 

関連情報


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