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松井えり菜:わびさびウートピア
展覧会
執筆: カロンズネット編集3   
公開日: 2012年 7月 27日

© Erina MATSUI

松井えり菜は、一貫して自らの顔をモチーフとし、自画像というジャンルの境界線上で自在に活動をつづけてきました。
彼女にとって自らの作品は、見る者とある種の体験を共有し、コミュニケーションをはかる手段であるといいます。その自画像作品において滑稽なほどに激しくゆがめられた松井の顔は、彼女自身の自己存在へと向かう視座とともに、彼女をとりまく世界とのつながりをとらえるがごとく、背景に描かれる海へ、森へ、空へと広がるように描かれ、時には宇宙にまで突き抜けてゆきます。そしてわたしたちは、目線を画面全体に誘導するように配置されたオモチャやかわいいキャラクターたちに目を向けているうち、いつの間にか松井の描くスペクタクルに引き込まれていることに気づきます。これらはまさに松井がキャンバス中にちりばめた、見る者との距離を縮めるための巧妙な仕掛けなのです。
若干 20 歳で制作した「エビチリ大好き」(2004)で GEISAI#6 で金賞を受賞後、2005 年にカルティエ現代美術財団でのグループ展に参加し華々しい国際デビューを飾ってから7年。国内外の数々の展覧会に出展し、その活動は作品制作にとどまらず、企業とのコラボレーションや展覧会のキュレーションにまで拡がっています。 また、本年初頭には、大原美術館(岡山県倉敷市)において個展「サンライズえり菜̶大原美術館をおもちゃ箱̶」が開催されました。同美術館のコレクション構築に多大なる貢献をおこなった画家・児島虎次郎が張り子で額を制作していたのにならい、自作のための巨大額を制作、またエル・グレコの名作「受胎告知」に自身の自画像を対峙させるなど、故郷・倉敷での凱旋に意欲的な取り組みを見せ、好評を博しました。 本展「わびさびウートピア」では、この大原美術館での個展のために制作した作品のなかから選んだ平面・立体数点に、タコを描いた新作「パンドラの壺」(仮題)と備前焼立体作品を加え、もはや十八番ともいえる松井ワールド全開のインスタレーションを展開します。今夏からは、さらに活動の可能性を拡げるべく、ドイツ・ベルリンでのレジデンス参加も決定している松井。技術・世界観ともに着実な成熟をみせる最近作の展示に、どうぞご期待ください。
つきましては、はなはだ略儀ながら本展の広報にご協力をお願い申し上げます。詳細情報、参考画像等用意しておりますので、お気軽にご用命ください。 末筆になりましたが、皆様のいよいよのご発展を心よりお祈り申し上げます。

山本現代
2012.6 

[作家コメント]
新作に寄せて

広い海の中で自分だけの狭い壺の中にいる心地良さを知ることは、実は幸福なことではないでしょうか?
幼少期を過ごした瀬戸内海の海底にはたくさんのタコ壺が沈んでいます。
しかしそれは、人が味わうためです。
私のウーパールーパーの水槽にもつぼが沈んでいます。
これは、人が安らぎを得るためです。
白昼夢に迷い込んだ先にいる彼は、願望器である壺の魔人そのものでした。

松井えり菜

[作家プロフィール]
松井えり菜

1984年岡山生まれ。美術予備校の文化祭で大賞を受賞した作品『えびちり大好き』が同校の広告として美術雑誌に掲載され、同作品でGEISAI#6の金賞を受賞。それをきっかけにカルティエ現代美術でのグループ展「私はそれを夢見る」に参加し堂々の国際デビューを果たす。2007年に初個展となる「わたしの小宇宙(コスモ)」を山本現代にて開催。同年11月にバルセロナのジョアン・ミロ財団で個展、モスクワビエンナーレなど精力的に活動中。


1984 岡山県生まれ
2004 多摩美術大学美術学部絵画学科油画専攻入学
2006 ヘルシンキ芸術デザイン大学、フィンランド(短期留学)
2008 多摩美術大学美術学部絵画学科油画専攻卒業
東京芸術大学大学院美術研究科絵画専攻油画入学
2010 東京藝術大学美術研究科絵画専攻油画卒業

個展
2007 私の小宇宙(コスモ)、山本現代、東京
2007 サイクル:カワイイ!・ジャパン・トゥデイ、ミロ財団、スペイン
2010 ワンタッチタイムマシーーーーン、山本現代、東京

グループ展
2005 J’en reve、カルティエ現代美術財団、フランス
2006 カルティエ現代美術財団コレクション展、東京都現代美術館、東京
2007
HOW TO COOK DOCOMODAKE?、201 Mulberry St.、ニューヨーク/08 ICC、東京
Drive You Insane、山本現代、東京
2008
DREAM of the SKULL、山本現代、東京
第31回東京五美術大学連合卒業・終了制作展、国立新美術館、東京
ART AWARD TOKYO 2008、行幸地下ギャラリー、東京
2009
The Simple Art of Parody、MOCA、台北
共鳴する美術2009-表現への挑戦-、倉敷市立美術館、岡山
第3回モスクワビエンナーレ、モスクワ
2010
ヒト ヒト、アーツ千代田内bambinart gallery、東京
東京藝大トランスWEEKS 、東京藝術大学美術学部大石膏室、東京
北原照久の超驚愕現代アート展、森アーツセンターギャラリー、東京
Selfportrait~私という他人~、高橋コレクション日比谷、東京

受賞
2004 GEISAI#6 金賞
2004 シェル美術賞展入選
2006 JASSO優秀学生顕彰事業 大賞
2008 福沢一郎賞
2010 岡山県新進美術家育成 I氏賞

パブリックコレクション

カルティエ現代美術財団
高橋コレクション
ジョンピゴッツェコレクション

オープニングレセプション:2012 年 8 月 25 日(土) 18:00 - 20:00


全文提供:山本現代
会期:2012年8月25日(土)~2012年9月21日(金)
時間:11:00 - 19:00
休日:日・月・祝
会場:山本現代
最終更新 2012年 8月 25日
 

関連情報


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