村上三郎:70年代を中心に |
展覧会 |
執筆: 記事中参照 |
公開日: 2011年 9月 30日 |
左:個展〔通称:拍子木〕(1973年5月21日〜6月1日/春秋館画廊、大阪)にて、画廊の階段の途中に置かれた拍子木 村上三郎(1925-1996)は、50年代中盤より《具体美術協会》の中核メンバーとして、従来の美術表現における諸形式を批判的に逸脱し、その枠組みを押し拡げ、新たな芸術の様態を生み出すという前衛的姿勢に精力を傾けると同時に、自己と外界の関わり、作品を生み出すということ、そして作品と他者との関係性について、常に独自の問題意識を追究しながら自身の表現を展開しました。 よく知られる『紙破り』のパフォーマンスや『投球絵画』から、50年代後半〜60年代に生み出された数々のペインティング、《具体》解散後の70年代以降に見られるミニマルな手法に基づいた概念芸術を思わせる一連の表現まで、多岐にわたるその作品世界はひとつの解釈では捉えきれない謎めいた様相を呈す一方で、一貫した哲学や一定の方法論に裏打ちされているような透徹した印象をも与えます。特に、70年代に開催された一連の個展は、展示全体を貫くひとつの命題が見受けられる、あるいは、展覧会そのものをひとつの作品と捉えることができるなど、そのそれぞれに、作家の抱く問題意識がより明瞭な形として現れていたことを感じさせます。 本展では、71年から77年に行われた7回の個展*に焦点をあて、作家直筆のメモやノート、当時の写真、そして、展覧会前あるいは会期中にある一定のルールに基づいて創出された作品やオブジェクトなどにより、展覧会ごとの内容、および同時期の制作の軌跡を多角的に提示することで、《具体》時代の活動に比べて、これまで注目される機会の少なかった70年代における村上三郎の表現活動を重点的に振り返ります。また、この度新たに修復を終えた50年代前半から最後期に至るまでの10点余りのペインティング、《具体》時代初期の『紙破り』の記録映像や、80年代後半以降のパフォーマンス及びインタビューを再編した映像を、上記70年代の作品・資料と並列させることで、本展が、半世紀に及ぶ活動の中で作家が追究した存在や認識、創造についての問題、そして、多様に展開・変貌を遂げてきたその表現に通底する方法論について再考・再検証するための起点の場となることを目指します。 【DVD出版のお知らせ】 ※全文提供: アートコートギャラリー 会期: 2011年11月12日(土)~2011年12月17日(土) |
最終更新 2011年 11月 12日 |