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ヤノベケンジ:レヴィテイション
展覧会
執筆: カロンズネット編集   
公開日: 2010年 10月 06日

「レヴィティション」のためのドローイング|2010年|紙に色鉛筆|©YANOBE Kenji| Courtesy of the artist and YAMAMOTO GENDAI

今展では、空中浮遊をテーマとした新しい作品を発表致します。

1990 年のデビュー展より20 年、ヤノベは日本のアートシーンを牽引する作家として時代を駆け抜けてきました。

冷戦、湾岸戦争、原発事故といった暗雲が人類の課題として立ちこめる世紀末に生を受けたものとして、自らが生き残る(サヴァイバル)ための装置を展開した90 年代前半。幼少の頃の大阪万博跡地での体験を創作の原点に見立てた“未来の廃墟への巡礼”というテーマを軸に、漫画やサブカルチャーの影響を意識的に備えた作品で社会問題を提示するヤノベは20 代の頃より高い評価を得ていました。

しかし95 年に発生した阪神淡路大震災と地下鉄サリン事件という「現実」、97 年に赴いたチェルノブイリで目の当たりにした「現実」は、時代の寵児としてもてはやされ国際的な評価を得ていたそれまでのヤノベの「妄想」世界を打ち砕きます。

そして、チェルノブイリ訪問の衝撃から得た「子供たちに未来を与えられるものを作りたい」という欲求のもと、新世紀の幕開けとともにそれまでの「サヴァイバル」というテーマを「リヴァイバル(再生)」へと大きく転換させました。以降ヤノベは、「メガロマニア」(国立国際美術館)、「子供都市計画」(金沢21世紀美術館)、「キンダガルテン」(豊田市美術館)などの大規模な個展開催を経ながら、『ビバ・リバ・プロジェクト̶スタンダ』『トらやん』、『ジャイアント・トらやん』『森の映画館』『ラッキードラゴン』などを次々と生み出し、途方もないスケールを持った作品群で私たちを魅了してきました。

さらに2009 年に発表した『ウルトラ̶黒い太陽』は、ヤノベの作品史上最も大きく、禍々しいイメージを伴った作品で、近年、平和主義的と捉えられがちであったヤノベのイメージを根底から覆すような新たな布石となったのです。

このようにヤノベは評価に甘んじる事なく、過去作や歴史を超えるべく挑戦し、新たな価値観を提示してきました。

今回の『レヴィテイション』では稲妻、大洪水、虹など、物理現象を用いた近作に引き続き、強大な磁力が用いられます。人間社会への提言を超え、自然現象を自在に操る近年のヤノベは、まるで君臨する超越者のようです。これらは美術を志したヤノベの、いわば「未来の廃墟」以前̶根源的な制作欲への立ち返りとも考えられるでしょう。

ヤノベケンジ
1965 年大阪生まれ。1991 年 京都市立芸術大学卒業。大阪万博跡地で幼少を過ごした体験から「未来の廃墟への巡礼」をコンセプトに、終末的な環境で使用するための機械彫刻を数多く制作、発表する。

1990 年生理食塩水を入れたタンクの中へ鑑賞者が浸かり瞑想する体験型作品「TANKING・MACHINE」を発表(金沢21 世紀美術館所蔵)。同年第一回キリンコンテンポラリーアートアワード(KPO キリンプラザ、大阪)最優秀作品賞受賞。

1997 年に放射能感知服「アトムスーツ」に身を包み原発事故後のチェルノブイリを訪問。居住禁止区域に住む人々との出会いに大きな衝撃を受け『アトムスーツ・プロジェクト』を開始、大阪万博跡地を中心に同プロジェクトを展開した。その後21 世紀の幕開けとともに制作のテーマを「現代社会におけるサヴァイヴァル」から「リヴァイヴァル」に転換させ、精力的に活動を続けている。

2003 年には国立国際美術館(大阪)にて集大成的展覧会『メガロマニア』を開催。2004 年金沢21 世紀美術館にて半年間の滞在制作『子供都市計画』を経て、2005 年『キンダガルテン』豊田市美術館(愛知)、2009 年『ウルトラ』豊田市美術館(愛知)、2010 年『ミュトス』発電所美術館(富山)など、既成のアートの枠組みを超えた壮大なスケールの作品を展開し続けている。

その他主な個展に1991 年『ヤノベケンジの奇妙な生活』キリンプラザ大阪(大阪)、1992 年『妄想砦のヤノベケンジ』水戸芸術館(茨城)、1998 年『史上最後の遊園地』キリンアートスペース原宿(東京、他巡回)、2003 年「アトムスーツ -サヴァイヴァル・リヴァイヴァル」北九州市立美術館(福岡)、2007 年『トらやんの世界』鹿児島県霧島アートの森(鹿児島)など。

主なグループ展に1992 年『アノーマリー展』レントゲン藝術研究所(東京)、1998 年『日本ゼロ年展』水戸芸術 館現代美術センター(茨城)、2000 年『ギフト・オヴ・ホープ』東京都現代美術館(東京)、2004『六本木クロッシング』森美術館(東京)、『アートがあれば』東京オペラシティギャラリー(東京)、『崩壊人体』ヤマモトギャラリー(東京)、2005 年『リトルボーイ』ジャパン・ソサエティ(ニューヨーク)、2007 年『《生きる》-現代作家9人のリアリティ』横須賀美術館(神奈川)、2008 年『Heavy Light: Recent Photography and Video from Japan』ICP (ニューヨーク、アメリカ)、「Manga! Japanese Images」ルイジアナ現代美術館(スウェーデン)、2009 年『Twist and Shout : Contemporary Art from Japan』バンコク芸術文化センター(タイ)、2010 年「2010 釜山ビエンナーレ」など。

主なパブリック・コレクションに、広島市現代美術館、ガレリア・ダルテ・モデルナ・ディ・ボローニャ、金沢21世紀美術館、熊本市現代美術館、ルイジ・ペッチ現代美術センター・プラト、国立国際美術館、豊田市美術館、 大原美術館がある。

※全文提供: 山本現代


会期: 2010年11月6日(土)-2010年12月4日(土)

最終更新 2010年 11月 06日
 

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