松井紫朗:Hundreds of Gardens |
展覧会 |
執筆: 記事中参照 |
公開日: 2010年 3月 10日 |
松井紫朗は、四半世紀に渡るアーティスト活動の中で、一貫して空間の探求を行ってきました。その作品は“内側と外側”や“こちら側とあちら側”といった両極を連続させたり、折り重ねたり、反転させたりすることで、日常的な感覚を裏切り、新鮮な空間概念を提示するものです。 過去、東京国立博物館表慶館や旧日本銀行広島支店などの歴史的建造物を会場とする展覧会では、 建物と一体化した作品を制作し、建築空間そのものの変容を達成しました。また、野外展においては、地下に掘られたトンネル内で火を焚いて煙を通すことで見えない姿を暗示したり、湖面に水の落下する滝を出現させたりと、斬新な企画を実現しています。 松井紫朗にとっての庭(特に日本庭園)は、空間認識のためのモデルとして、作品制作において常に参照されてきた存在です。身体経験が知性の働きを誘発していくこと、 つまり「想像力を喚起する装置」としての機能性に、 相似関係が見出されていると言うことができるでしょう。今回の展覧会は、出品作品の個々を庭に見立て、その間を歩きながら様々に設定された空間的な仕掛けを発見していくものになります。例えるならば、回遊式庭園を歩きながら設計者が空間に組み込んだ「遊び」を読み解いていく行為に近いものとなるはずです。 本展では、ギャラリーの全室を使用して、大学院生時代に作られた初期作品、1990年代に制作された彫刻作品をはじめ、多様な形式を採用する近作までを展示します。 出品作品の制作年代は幅広いですが、回顧展(時系列)的な展示形式を採らず、様々な方法で表現されてきた作品群を緊密に構成することにより、それらの背後にある一貫した造形思考が浮上する配置を予定しています。私たちが普段見過ごしている空間の複雑さを、思考(頭脳)と知覚(身体)のズレを通して問いかける、松井紫朗の造形世界を是非ご覧いただきたいと思います。 2010年5月22日(土) ※全文提供: アートコートギャラリー |
最終更新 2010年 5月 18日 |