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contact Gonzo:様々な困難を伴う作業の痕跡と音
展覧会
執筆: カロンズネット編集3   
公開日: 2014年 3月 14日

performance photo: Museum of Modern Art / NY photo by Choy Kafai
Performing Histories: Live Artwork Examining the Past at The Museum of Modern Art, New York

contact Gonzo(コンタクトゴンゾ)とは、2006年に垣尾優と塚原悠也が開発・命名したメソッド及びユニットの名称で、人と人との間に起こる「接触」という物理現象に起因する様々な瞬間的事象をとおし、「痛みの哲学、接触の技法」をキーワードに、自らにとっての「世界の仕組み」を紐解こうとする方法論を指しています。
この「gonzo」という単語は1970年代に展開された「ゴンゾ・ジャーナリズム」というムーブメントからきており、「めちゃくちゃな」というスラングらしきこの単語を用いたジャーナリズムの手法は、従来の「客観的」だとされていたものとは正反対の「主観的な」判断で取材が進み対象すらもあやふやになるという、ジャーナリズムの「領域」を内側から喜々として破壊するようなものと捉えた彼らは、その活動の名称にこの単語を援用しています。

コンタクト・インプロヴィゼーション(複数人が互いに体重を預け合う形で展開する即興の身体表現)とも、格闘技ともダンスともつかない動き、身体を基軸に行われる彼らの表現スタイルは、「接触」という物理現象が表現の主な要素のため場所や環境に制限されることなく、近年では活動の場を大きく広げています。韓国、中国、フィンランド、シンガポールをはじめ近年では海外での活動も多く、また『六本木クロッシング2010:芸術は可能か?』をきっかけに、2013年にはニューヨーク近代美術館でもパフォーマンスを行いました。一見するとただの殴り合いのようで、しかし時に洗練されたダンスのような動きも垣間見え、優美でさえある特異な彼らのパフォーマンスの模様は、「YouTube」などのメディアを使って即時的に発表されています。

—多分僕は、発見したいのです。ある関係性をつくっているのです。この二人の(そしてこの二人に関係なく)瞬間変わりゆく関係性を、そしてまたより本質的な関係を探りながらつくってゆく行為、学び、そのものをコンタクトゴンゾと名付け呼んでいます。名付ける事は様々な要素、関係が絡み合います。(中略) 様々な、嘘誠、時間、場所、関係、関係以前の関係の可能性、無関係という関係までも含めた、様々なスパークする様な結合で一つの名前がつけられます。このように“コンタクトゴンゾ”という名前もこのようにつけられて、そして行為としての”コンタクトゴンゾ”はまさにこのスパークそのものです。(垣尾優)

—contact Gonzoとはこの世で最速のメディアである肉体を用いて人間の意志の強さ、時間の相対性とエンドルフィンの脳への作用とともに、確認し加速させるものだと思っています。僕はその領域を「正しい軌道」と呼んでいます。人間の本来の能力はこの軌道に基づいていて、これにより感じ、均衡をはかり、対話をし繋がるのだと思います。パプアのジャングルの戦士は木の葉に乗ってヒラヒラと落ちてきて、音もなくいきなり敵の目の前に立っているのだという話ですが、この人達は自然との対話の中で哲学を育みその能力を保持しているのではないでしょうか。(中略)早く僕も木の葉にヒラヒラと乗って好きな人に会いにいったりしたいです。あとはcontact Gonzoをやることによって、人を治癒出来るようになりたいです。(塚原悠也)

今回の「様々な困難を伴う作業の痕跡と音」では、人と人との間の接触にとどまらず、メンバー各々の身体と、「困難」な状況との関係がテーマになっています:
まず、関西のゴンゾ事務所の解体と制作の過程で出た廃材を使用し、会場構成を行うことから始まります。その後、段ボールを身に纏い、自分たちのポートレートを背負った彼らは、時速100キロを記録するスピードでフルーツを投げつけられるという半ば狂気の「攻撃」に合いながら、ギャラリーの入り口からその廃材によって構成された空間のなかを、壁をたどり地に足をつけず移動します。彼らの「クライミング」の最終的な目的は自分たちのポートレートを所定の場所に展示することにありますが、このいわば無駄に自らに強いる苦行ともいえるインスタレーションの過程=アンダー・インスタレーション中に起こることを記録し、移動と作業の痕跡と共に公開します。
まるでギャラリー空間が戦場であるかのごとく、あたかも爆撃を避けながら荒れ地の中に潜む地雷を踏まぬよう宙を渡り、身体に直接かかり続けている重力という圧力に拮抗しながら、その行動目的を達成しようとする一連の作業全体の記録が、最終的な「作品」として提示される、入れ籠のような構造をもっています。
しかしこの容赦ない「戦場」のような状況はそもそも彼らが自分自身で仕掛けたものであり、その状況に自らを投じ困難な作業を強いるという自己完結型マゾヒズムともいえる構成は、状況と身体の関係性だけを表象するのではなく、いわば自分自身とのコンタクトであると言えます。

最終的になにが残るかわからない、困難な状況下の作業をとおして身体が可能にする極限の移動の「痕跡」と、同時収録された「音」の展示は、わたくしどもにとってもたいへんスリリリングな試みですが、即興性に留まらず、それをいかにギャラリー内でインスタレーションとして成立させるかという挑戦とその情熱を、アーティストやご来場いただく皆様と共にできますことを、たいへん嬉しく考えております。

山本現代
2014年2月

[作家コメント]
これまで、山の中での移動と運搬を繰り返してきた。
ある日、重い機材を持って下山すると、頭の上にヒルが吸い付いていて血をずっと吸っていた。
それがぶくぶくに太って地面にぽとっと落ちたので、あまり何も考えずにライターで燃やしたら、えらくもがいていた。
その姿はファンクっぽくて、激しく踊っているようにも見えたが、最後に円形に上半身を振り回しながらあたま(?)の先っぽから血をビューッと吹き出して息絶えた。
いやいやいや、そんなドラマチックに死んでるけど、それおれの血やぞ。
と思いながら、機材を車に積みこんだ。
ある日、ギャラリーの床を踏まないように作品をインストールしようと壁づたいで移動しつつその思いに反して、そこから落下しながら、ふとそういうことを思い出していた。

contact Gonzo
2014年2月25日

[作家プロフィール]
contact Gonzo (コンタクトゴンゾ)
2006年結成。contact Gonzoとは、集団の、そして方法論の名称、つまりローファイなスパークである。肉体の衝突を起点とする独自の牧歌的崇高論を構築し、パフォーマンス作品や、映像、写真作品を制作。
その背後には山がある。現在、事務所を自分たちで作りながら、そのスペースで時速百キロで飛ぶ果物を受ける肉体を観察したり、耳を澄ましたりしている。メンバーは個々においてもそれぞれの分野で作品を発表、もしくは料理や読書等をしている。セゾン文化財団助成対象アーティスト。

主な活動、展覧会
2007 吉原治良賞記念アート・プロジェクト2008参加大賞 受賞
HARAJUKU PERFORMANCE + 2007 /ラフォーレミュージアム原宿、東京
2008 南京トリエンナーレ2008 インスタレーション・パフォーマンス参加/南京博物院、中国
HARAJUKU PERFORMANCE + 2008/ラフォーレミュージアム原宿、東京
2009 「the modern house」/大阪現代美術センター、大阪
コムデギャルソン展、関連パフォーマンス/東京都立現代美術館、東京
HARAJUKU PERFORMANCE + 2009/ラフォーレミュージアム原宿、東京
2010 六本木クロッシング2010展:芸術は可能か? インスタレーション・パフォーマンス参加/森美術館、東京
YCAM performance loungeパフォーマンス参加(梅田哲也とのコラボレーション)/山口情報芸術センター、山口
円盤ジャンボリーハッキンオン パフォーマンス参加/渋谷O-NEST、東京
「Out of Place, Out of Time, Out of Performance」 パフォーマンス参加/ナム・ジュン・パイク・アートセンター、韓国
あいちトリエンナーレ2010 パフォーマンス参加/愛知芸術文化センター、愛知
BODY OVERDRIVE 展 (Stelarc & contact Gonzo) インスタレーション・パフォーマンス参加/京都芸術センター、京都
第10回インドネシア・ダンスフェスティバル/ジャカルタ・インドネシア
第17回シドニー・ビエンナーレ パフォーマンス参加/シドニー・オーストラリア
2011 「風穴 もうひとつのコンセプチュアリズム、アジアから」 インスタレーション発表/国立国際美術館、大阪
Spring Dance Festival /ユトレヒト・オランダ
Bunker Festival / リュブリヤナ・スロベニア
Performing Arts Festival Nooderzon / フローニンゲン・オランダ
Habbel Am Uffer (HAU) Dance Festival \"Leaving the contort zone\" /ベルリン・ドイツ
Theater Spektakel /チューリッヒ・スイス
Trafo 単独公演/ブダペスト・ハンガリー
2012 Tweetakt Festival パフォーマンス参加/ユトレヒト・オランダ
パノラマ・フェスティバル パフォーマンス参加/リオデジャネイロ・ブラジル
「Double Vision: Contemporary Art from Japan」 映像出品・パフォーマンス参加/モスクワ・ロシア
音響作品「abstract life」発表/伊丹市アイホール、兵庫
2013 ニューヨーク近代美術館にてパフォーマンスを/ニューヨーク、アメリカ合衆国
YCAM10周年記念事業にて森に2週間滞在し、インスタレーション、パフォーマンス
レイキャビク・ダンス・フェスティバル(梅田哲也とのコラボレーション)/レイキャビク、アイスランド
フライブルグ市立劇場でのレジデンス制作(yang02とのコラボレーション)/ドイツ
十和田奥入瀬芸術祭(梅田哲也、志賀理江子とのコラボレーション)/青森
「楽園想像—芸術と日常の新地平—vol.4」αMギャラリー、東京
写真家ホンマタカシとの共同劇場作品「熊を殺すと雨が降る」/伊丹市アイホール、兵庫
神戸—アジアコンテンポラリーダンス・フェスティバル#03(西光祐輔、スカイチャーチとのコラボレーション)/Art
Theater dB神戸、兵庫/アートエリアB1、大阪

オープニングレセプション:2014年4月18日(金)18:00~20:00

contact Gonzo

全文提供:山本現代
会期:2014年4月18日(金)~2014年5月17日(土)
時間:11:00 - 19:00
休日:日・月曜、祝日
会場:山本現代
最終更新 2014年 4月 18日
 

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