イグノア・ユア・パースペクティブ13:THINKING ABOUT STRUCTURE |
展覧会 |
執筆: 記事中参照 |
公開日: 2011年 10月 13日 |
児玉画廊|東京では10月8日より11月12日までイグノア・ユア・パースペクティブ13「THINKING ABOUT STRUCTURE」を下記の通り開催する運びとなりました。シリーズで開催しているこのイグノア・ユア・パースペクティブは、その時々のテーマに 沿って画廊の視点から作家や作品を選定し、それぞれの作家の個展で作品を見る時とはまたひと味違った魅力を提示するための展覧会です。今回は「THINKING ABOUTSTRUCTURE」と題して、概念的な「構造」に、ある種の投げかけを行っている3名 の作家、鎌田友介、貴志真生也、和田真由子をフィーチャーします。3名ともに今展のための新作を発表致します。 鎌田友介は、平面で用いるパースを強引に三次元空間に引っ張り出すかのように、木材やアルミフレームによって、まるで空間において線を描くような作品を制作しています。例えば三次元的に見れば四角い枠が拉げたように見えるだけでも、二次元的に捉え直すと俄に奥行き感のある矩形に見える、というように、作品が多視点的であると同時に多次元的なものになっています。「多数の消失点」と作家は表現していますが、空間の中でいくつもの消失点がランダムに存在しているように、様々な方向に向かって奥行き感を示す矩形が密集して作品を構成しています。鎌田はこの度第6回資生堂 art eggに入選、来年2月3日より資生堂ギャラリーに於いて個展の開催も決まり、今後益々の活躍が期待されます。 貴志真生也は、立体やインスタレーション作品を発表しています。「意味がないもの」あるいは「理解できないもの」をテーマに制作していますが、だからこそ、敢えてどこにでもある資材(合板、コンクリートブロック、角材、ブルーシート、発泡スチロールなど)を使って、シンプルで合理的な構造を用いています。作品を構成しているパーツの接合部分や、全体のフォームのバランスなど、整合性が取れているにも関わらず、結局どこをどう見ても何一つとして理解の助けになるようなヒントを得ることが出来ません。結局何が何だか分からないまま煙に巻かれてしまう様な、不思議な感覚と、見たことのないものに接したわくわくするような高揚感が同時に沸き起こってきます。貴志は現在、メゾン・エルメス(銀座)のウィンドウ・ディスプレイにおいて、貴志特有の世界観とエルメスの商品との見事なコラボレーションを見せていますので、お近くへお越しの際には是非ご覧下さい。 和田真由子は、思い浮かんだ図像イメージをいかにして具現化するか、ということを追求している作家です。そもそも思い浮かんだ時点では、形や質感が曖昧な状態にある図像イメージを、作品化するためには、絵画や彫刻といった形式に当てはめるだけでは不足なのではないか、という疑問点から、そのいずれの性質をも併存させるために、「平面的な立体作品」あるいは「立体的な平面作品」というものの実現に挑んでいます。例えば、平面の上に建物を建てる、という作品では透明なメディウムやニスなどを塗り重ねたそのレイヤーが建築物などの実際の構造に則っており、その様子が明確に見て取れるように制作し、また、ドローングのように立体造形をするという作品では、あたかも紙に鉛筆で素描するような感覚で思い浮かんだイメージをなるべくそのままの形でベニヤ板やビニールシート等で造り、それを組み合わせるということをしています。和田は現在児玉画廊(京都)において、新作個展を10月15日まで好評開催中です。和田の多様な作品観を体系的に示した非常に意欲的な内容となっておりますので、是非併せてご高覧下さい。 鎌田は、構造(パース)そのものが作品と言えますし、和田は、イメージが形を得るのに必要な構造(絵画的なイリュージョン)を見せることが作品の主点となっています。また、貴志は、作品の構造が単純で平易なことに反比例する意味の無さに重点を置いて制作しているといったように、三者はそれぞれ違った視点から各々の作品を制作しています。しかしながら、いずれも「構造」を見せるということ、或は「構造」そのものが作品の中核を成す、という点では非常に近しい感覚を共有しているように思えます。今回、彼らの作品を敢えて一つの展覧会に集約し、「構造について考える」という主題を設けることで、そこにある差異と共通点を炙り出し、それによって究極的にはいかにしてイマジネーションが形を伴って存在しているのかについて思考することができるのではないか、と考えます。 出展作家: 関連プロジェクト 全文提供:児玉画廊|東京 会期: 2011年10月8日(土)~2011年11月12日(土) |
最終更新 2011年 10月 08日 |