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Come into Sight
展覧会
執筆: カロンズネット編集   
公開日: 2010年 6月 15日

画像提供:Port Gallery T|Copyright © Kenichi Amano

剥製、レプリカ、生きている動植物。天野憲一にはそれらを被写体にした「second nature」と題する一連の作品があります。対象への徹底的な眼差しとカメラの機械性によって独特の写真画像を得て、ものの見方に奇妙なリアリティで迫ります。「この剥製は実際の動物と全然違いますよ。」専門的に動物と関わる研究者から聞いた一言が、きっかけではないとしても、繰り返すには十分な問いだったのではないでしょうか。このたび新作「complete」を発表します。

川辺ナホはハンブルグを拠点に主にビデオ作品やインスタレーション作品を展開しています。そのビデオ作品は、どちらかと言えばささやかで、具体的な何かを声高に語るものでもありません。しかしループする映像を見ていくと、日常的に私たちが体験している事柄(例えそれがまったく違う形であたとしても)が、強烈に、時には非常にありありと引き出されます。抽象的なイメージが起こす波動に個人的でリアルな体験が結びつくことに、私は興味を持っています。しなやかな術を見るからかもしれません。秋に一時帰国し、Port GalleryT にて個展を開催いたします。

目にしながら実は何も見ていなかったことに気づく事があります。田中早緒理の作品「観察ノート」に出会った時にも、そのことに引きつけられました。写真に記録されているのは特別な場所ではありません。路上や道端の草花です。小さくてもそれぞれが名前を持つことを知る田中は、そこに咲く草花が等しく存在していることを見つめていきます。このたびニュープリントを展覧いたします。作品から放たれる光をぜひご覧ください。

野嶋革は、自然の風景にまなざしを向け描き続けるアーティストです。カメラの眼を強く意識させられるほど視覚が集中していく作品は、銅版画の技法で、眼に映るもの、みること、みつめることを探求して描かれたイメージです。美しく、またそれだけでは語り得ない光景。今の時代に、自然の風景に対峙し続ける意味と真摯に向き合いながら制作する野嶋。水面に映る光景を描いた作品を展覧いたします。

展覧会名を『Come into sight』としました。見ることへの独自の引き出しを持ち合わせた4 名それぞれの作品から、自由で深い対話が生まれることを楽しみにしています。

天野憲一(Kenichi Amano):写真
1971 年大阪生まれ。大阪芸術大学写真学科卒業。 1999 年「second nature ~第二の天性~」で初個展以来、毎年個展やグループ展を多数開催。1999年~2008 年までThe Third Gallery Aya でのプロジェクト「Argus」に参加。 2002 年「Art Scholarship 2001 現代美術賞 天野太郎部門 佳作」、2004 年「キヤノン写真新世紀奨励賞」、2009 年「富士フォトサロン新人賞奨励賞」を受賞。コレクションに、清里フォトアートミュージアムがある。

川辺ナホ(Naho Kawabe):ビデオ
1976 年福岡生まれ。1995~1999 年武蔵野美術大学映像学科卒業。2001 年DAAD 留学奨学金(ドイツ学術交流会)を得てドイツへ渡る。2001~2006年 University of fine Arts of Hamburg へ留学。Diplom を取得。2005 年「Karl-H.-Ditze 賞」、University of fine Arts of Hamburg 奨学金受賞、2008 年ハンブルグ市美術奨学金を取得。またアトリエ奨学金により2006 年ドイツ・メクレンブルグ州プリュショウ城、2008 年ドイツ・ザルツヴェーデルでの活動がある。現在、文化庁派遣研修員としてハンブルクにて活動及び在住。

田中早緒理(Saori Tanaka):写真
1969 年大阪生まれ。1992 年神戸大学理学部卒業。2001 年個展「観察ノート」The Third Gallery Aya(大阪)を開催。その後NPO 法人彩都メディア図書館、美術ワークショップの講師を勤める。

野嶋革(Arata Nozima):エッチング
1982 年滋賀県生まれ。2004.11~2005.6 Accademia Italiana(フィレンツェ)留学。2006.3 京都市立芸術大学美術学部版画専攻卒業。2006.10~12 Royal College of Art(ロンドン)交換留学。2008.3 京都市立芸術大学大学院美術研究科版画専攻修了。2008.4~現在 京都精華大学ビジュアルデザイン科嘱託助手。<個展>2007.11「野嶋革 個展」番画廊(大阪)2008.10「TOPOS-ひだまり-」石田大成社ホール(京都)2010. 2「メメント・モリ ‒写実からリアルへ-」コバヤシ画廊(東京)<グループ展>2006.6 「The New Faces from Printing」石田大成社ホール(京都)「京展」京都市立美術館(京都)(※ 07.08 年も出品)12 「Diversity」RCA main gallery(London) 2007. 8 「Porto di stampa」アートゾーン神楽岡(京都)「Individual Sight-AfterMath No.6」The Art complex Center of Tokyo(東京)2008. 9 釜山ビエンナーレ「Art is Now」 釜山文化会館(プサン) 10 「International Painting Exhibition」 YAMAKI ART GALLERY (プサン) 2009.5 「京都現世美術館2009~お寺で芸術を愉しむ~」建仁寺 禅居庵(京都)6「Summer Pleasures in NewYork」 A-forest gallery(ニューヨーク)<受賞>2007「大学版画展」 町田市立美術館(東京)買上賞 2008.「京都市立芸術大学 制作展」 大学院市長賞、「京展」 版画部門 京展賞、「山本鼎版画大賞展」」優秀賞 2009「SummerPleasures in NewYork」IAAC Award 2010「第78回版画展」 版画協会賞。

※全文提供: Port Gallery T


会期: 2010年6月21日-2010年7月17日

最終更新 2010年 6月 21日
 

編集部ノート    執筆:平田剛志


移ろいゆく自然の事象をモチーフとした天野憲一、川辺ナホ、田中早緒理、野嶋革によるグループ展。

天野憲一は腐敗したレモンを大判プリントで提示することで、果実が有する死のディテールを捉えている。自然が与える時間の痕跡が光の明暗の中に美しく留められた作品である。

世界の細部に着目したのは、「観察ノート」と題する路傍の草花を記録した田中早緒里である。撮影された植物や花にはプリントの余白に学術名が記され、見えていながら、見ていない「雑草」の多様性へと私たちの目を向けさせる。

対して、目を見上げるように展示されるのは川辺ナホの映像作品「fall, float, evenly」だ。テレビ放送終了後に流れる砂嵐(スノーノイズ)を実際の雪の映像によって表現した本作品は、雪の動きと4面の映像が重なり合い、雪降る映像の闇へと引き込まれていく。

モノクロームへと誘われるのは、野島革のエッチング作品である。光と影の諧調が作り出す自然の風景は、自然の大気や神秘性を露わにする。

夏至の時期に合わせて開催される本展を通して、夏へと変わりゆく季節の変化に目を向けたい。


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