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畠山直哉:線をなぞる / 山手通り
展覧会
執筆: カロンズネット編集   
公開日: 2010年 5月 24日

《線をなぞる / 山手通り #3418》 2008年
シータプリント、アルミニウムにマウント|54 x 49cm
画像提供:タカ・イシイギャラリー

今回発表される作品シリーズは、畠山が2008年から2010年にかけて、東京を縦断する山手通りを大橋交差点から熊野町交差点まで、南北10kmに渡って撮影を続けた作品によって構成されます。

畠山は、2007年に神奈川県立近代美術館鎌倉で開催された個展「Draftsman’s Pencil」のカタログに寄せたテキストに、本展と同じく「線をなぞる」というタイトルを付しました。そこでは、存在するあらゆるものが人間の何らかの意思によって構成されている-構成物のほんの僅かな一端さえ人間の手によって決定されたものである-現代都市において、写真家としていかに応答し、生きていくことが可能であるのかが綴られています。

探してみよう、都市の中に隠喩となる線を。僕の道具は、写真という「自然の鉛筆」だったはずだ。だから僕はとりあえず、都市の線を、この鉛筆でまたなぞってみよう。そこには人間の鉛筆が引いた線と、自然の鉛筆が引いた線が重なった、二重の筆跡が現われてくるはずだ。その筆跡のどこかから、いままで隠れて見えなかったものが姿を現し、それが僕たちに隠喩への糸口をつかませ、僕たちを故郷への入り口に導くかもしれない。その可能性を探るために、この鉛筆を使ってみよう。
畠山直哉 (「線をなぞる」 『Draftsman’s Pencil』 神奈川県立近代美術館、2007年 より抜粋 )

山手通りの下には、今年度3月に全線開通をした首都高速・山手トンネルが走っています。畠山が撮影を続ける間、地上は常に工事中であり、そこに見られる景色は文字通り日ごとに変化を続けていました。人間の手によって引かれる線は、まるで刻々と姿を変え、色彩を変える自然のように都市を形作ります。「線をなぞる / 山手通り」の作品シリーズでは、都市に引かれた線と面と色彩が、私たちが日常感知している様相とは異なり、まるで都市という巨大な謎の急所を突くような姿を見せており、都市と自然の境界へ鋭い疑問を投げかけているようです。

なお、本展では展示スペースの1区画を使用して、今年度1月に開催されたG-tokyo にて発表し好評を得た 「Slow Glass/Tokyo」のシリーズも展示いたします。本シリーズは、9月4日から10月31日まで開催される第2回ポズナンビエンナーレへも出展が予定されています。東京を様々な様相で映し出す両シリーズを、この機会の是非ご高覧ください。

※全文提供: タカ・イシイギャラリー


会期: 2010年7月17日 (土)-2010年8月14日 (土)

最終更新 2010年 7月 17日
 

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