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曽根裕:Perfect Moment
展覧会
執筆: カロンズネット編集   
公開日: 2010年 9月 24日

《It Seems Like Snow Leopard Island 2002-06》(参考作品)
紙・木・スポンジ・海藻・ポリウレタン・塗料・ポンプ・チューブ・生木・土
944.9x868.7x370.8cm
Courtesy: David Zwirner, New York

ロサンゼルス在住の作家・曽根裕は、国際的に高く評価されている日本人作家のひとりです。その作品は、観客を巻き込んだプロジェクト型の作品、映像、彫刻、ドローイング、油彩画など、実に幅広い展開を見せます。たとえば、19個の自転車をつなげ、19人で乗るものの、殆ど前に進むことのできない《19番目の彼女の足》などのプロジェクト、友人が夜行バスの中から撮影した夜の旅の風景を編集した《ナイト・バス》などの映像作品、さらには香港の夜景を象った大理石の彫刻《香港島》といったように、彼は到達不可能なもの、目に見えないもの、経験や空間といった形に留めることができないものを、意外な素材や技法によって作品として具現化し、私たちの想像力を常に刺激してきました。近年は、中国とメキシコに工房を設け、現地の職人たちと協力しながら、彫刻作品を中心に制作を続けています。

本展は、中国の石工の街、崇武で作り上げた大理石の彫刻作品、メキシコのグアダラハラで作り上げた籘を編み込んだ新作の彫刻作品を中心に、久しく日本で紹介されることのなかった曽根裕の“人生=芸術”の「現在」を紹介します。

これらの彫刻作品は、その素材感から極めて古典的でモニュメンタルな印象を与えます。しかし、曽根は石や木といった素材としての自然と「アート(技術)」としての人工を対立させることなく、不可分のものとして結晶化し、現代の彫刻として再びそれらに新鮮な息吹を与えます。また、これらのモチーフは都市の夜景や光、雪の結晶といった刹那的で儚いものにもかかわらず、大理石などの堅牢な素材と伝統的な職人技によって具現化され、時間の厚みが加えられます。それはあたかも異なる民族や政治文化、歴史、社会、個々人のアイデンティティを抱え、複雑化した私たちの世界そのもののようです。さまざまな境界を越え、世界のあり方そのものを切り取るような制作によって、彼は、いま芸術を生み出すことの意味や、人間の根源的な創造力を検証しつづけているのです。

本展では、旧作・新作を通じて曽根裕の現在・過去・未来をご紹介します。そこで私たちは、まさにすべてが内包されているカオスな可能性に満ちた瞬間、「パーフェクト・モメント」を体感することになるでしょう。

曽根 裕 Sone Yutaka
1966年、日本生まれ。ロサンゼルス在住。パフォーマンス、ヴィデオ、彫刻、ドローイングなどを通して多様な表現を展開するコンセプチュアル・アーテイスト。彼の作品に一貫しているのは、不可能なヴィジョンの造形化という美学であり、それによって見る者の想像力を喚起させ、未知の物語へと誘う。本展にはカリフォルニアUCLAの学生19人と一緒に、スキー、スケートボード、サーフボードといったスポーツ系の「乗り物」を作り、たった一日のうちにこれらの乗り物を駆使して山から海へと移動しつつカリフォルニア・ライフを満喫するというヴィデオ作品≪最も美しい一日≫を出品する。

※全文提供: 東京オペラシティアートギャラリー


会期: 2011年1月15日(土)-2011年3月27日(日)
会場: 東京オペラシティアートギャラリー

最終更新 2011年 1月 15日
 

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