北本裕二:陶 地層・探検 |
展覧会 |
執筆: 記事中参照 |
公開日: 2009年 9月 12日 |
北本裕二(kitamoto Yuji)さんの作品は、陶土の壁が会場に構成されるインスタレーションです。その壁は、淡い茶、灰、薄緑、白色が混ざり合い、波に洗われた岩石のように豊かな表情を持っています。ひとつのパーツは20cm四方で、250枚以上を組み合わせることによって壁状に成型します。会場に構成させた様は、まるで地層の隙間に迷い込んだようで、来場者は陶土の壁の間を通って鑑賞します。 陶土の壁は、太古からの動植物の死骸や有機物が蓄積した豊饒さ、幾度も断裂を繰り返したリアルな裂け目や、多層のグラデーションに彩られ、壮大なイメージを感じさせます。足を進めるごとに、まるで土にすっぽりと包まれたような、安らかさを感じさせる作品です。 北本裕二さんは、美術大学で陶芸を始め、今年8年目になります。制作のテーマは地層、地底、そして地球です。2008年頃から、長さ180cmのたたら板からつくる、現在の作品をつくり始めました。薄い板状に伸ばされた土の、ひび割れ、染み込んだ風雨、化石を内包しているかのような表情で、原始の力を感じさせる迫力を生み出しています。 万物が刻々と変化して土が出来ること、やきものとの関わりなどをベースに、できることなら地球そのものをつくりたいが、どこかそれを感じさせるものが出来ればという想いで制作しています。今展は東京での初めての発表の機会となります。 作家略歴 個展 全文提供: INAXギャラリー |
最終更新 2009年 9月 04日 |
ガレリアセラミカは元々それほど広いスペースではない。しかし今回北本の作品によって内部がさらに狭められている。陶土による壁が会場に作られているのだ。それはあたかも洞窟の中の自然が作り出した通路のようであり、奥には祭壇のようなものまであり荘厳としている。ただし私たち観客はそれを見ることしかできない。プレスリリースには「来場者は陶土の壁の間を通って鑑賞します」とあるのだが、実際その中に入ることは禁じられていた。何らかの事情があったのだろうが、残念なことである。会場で配布していた資料によれば、北本が最初に発表した作品≪地球の歩み方scene1≫(2003年)は陶板を観客に踏ませるものだったという。作品と観客との積極的な接触が、今回も可能であったら面白かったのだが。