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スーパー・ワールド・オン・ペーパー 古久保憲満と松本寛庸
展覧会
執筆: カロンズネット編集3   
公開日: 2012年 9月 03日

 

夢想した世界を紙の上に描く。誰もが一度は試みたことがあるだろうし、美術史の中でも長い歴史を持つ営みだ。その可能性を、このふたりはさりげなく追求している。地図が好きな松本にとっては方向と正確さがとても大事。小さなモチーフを反復させながら、絶妙に余白を織り込みながら、繊細な色彩で画面を埋め尽くしていく。一方、鮮やかな発色を好む古久保は、その色彩に負けないくらいの大胆な世界を展開する。四方から建物や道路を描いていくのだ。でもその世界に不思議と違和感はない。人の姿はほとんど見えないのに躍動感が生まれている。どちらも90年代生まれ。対照的なふたりの「スーパー・ワールド・オン・ペーパー」をぜひご覧あれ。
― 本展監修 保坂健二朗(東京国立近代美術館主任研究員)

古久保憲満(1995~)の作品は、2010年に「かんでんコラボアート21」で最優秀賞を受賞し、翌年には「ポコラート全国公募展2011」の受賞作品にも選ばれました。現在は、ヨーロッパ7か国を巡回する展覧会にも出展され、注目を集めています。彼は記憶やインターネット検索で集めた情報を、現実と空想が入り乱れる自分だけの街へと昇華させていきます。

一方、松本寛庸(1991~)は、2007年頃から地元熊本県で作品を発表し始め、2009年にはボーダレス・アートミュージアムNO-MAで開催された「この世界とのつながりかた」展で出展作家の一人に選ばれ、翌2010年にはアール・ブリュット・ジャポネ展(フランス・パリ)へ出展されました。彼は、模様の配置や色の配色に至るまで独自の計算された建築図があるかのように精巧に描き、絶対的世界観を刻んでいきます。 両作家とも、幼少期から絵を描き始め、現在も、多くの絵画作品を描いています。彼らにとって、真っ白な紙は新しい世界への入り口であり、平面は四次元をも超えた世界へ拡がっていきます。今回の企画は、二人が描き続ける独自の「世界」を「スーパー・ワールド」と題して一つの展覧会へ結集させています。

[作家プロフィール]
古久保憲満

1995年生まれ/滋賀県在住
全方位から描かれ、今にも街の喧噪が聞こえてきそうなほど活気とエネルギーが充満する街の絵。古久保の創作は小学校に通い始めた頃より始まる。彼は世界の都市や建築物、宇宙、車、飛行機、船などといった彼が関心を寄せるものを社会の情勢や出来事、歴史と組み合わせながら、実にユーモラスに社会の断面を切り取り、独自の世界観や社会観を紙に描き込んでゆく。紙面には新しい街(社会)が創造され、その壮大な都市の物語は年を重ねる毎に紙面の上で広がり続けている。


松本寛庸

1991年生まれ/熊本県在住
紙面に広がる極微の世界。松本の作品は精密にそして色鮮やかに描かれた極小のカタチたちが集まり形成されている。彼は宇宙や生物、歴史、乗り物、記憶など自らが興味を持った対象を彼独特のイメージに転換させ描いていく。一度、彼のファインダーを通すとどの対象物も単純な形と色彩に置き換わり、新しい形象となって構成される。また彼独自の物語となり紙面で展開される。彼は2歳頃から自宅で絵を描き始め、緻密さを増しながら魅惑的な極微の世界を増殖させている。


監修者 保坂健二朗 東京国立近代美術館主任研究員)

慶応義塾大学大学院修士課程修了(美学美術史学分野)。
2000年より現職。企画した展覧会に『建築がうまれるとき ~ペーター・メクリルと青木淳』展(東京国立近代美術館、2008年)、『現代美術への視点6 ~エモーショナル・ドローイング』(東京・京都国立近代美術館、2008年)、『この世界とのつながりかた』(ボーダレス・アートミュージアムNO-MA、2009年)、『建築はどこにあるの? 7つのインスタレーション』展(東京国立近代美術館、2010年)など。共著に『青木淳JUN AOKI COMPLETE WORKS(1)1991-2004』(INAX出版、2004年)、『丸山直文全作品集1988-2008』(求龍堂、2008年)、『キュレーターになる!アートを世に出す表現者』(フィルムアート社、2009年)など。『すばる』『朝日新聞』で連載。武蔵野美術大学非常勤講師も務める。


全文提供:ボーダレス・アートミュージアムNO-MA
会期:2012年8月24日(金)~2012年11月11日(日)
時間:11:00~17:00
休日:月
会場:ボーダレス・アートミュージアムNO-MA
最終更新 2012年 8月 24日
 

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