山下和也:寒山拾得 |
展覧会 |
執筆: 記事中参照 |
公開日: 2012年 11月 08日 |
山下和也(1978-)は、京都嵯峨美術短期大学時代に平安仏画、北宋山水画、絵巻等の模写により日本画の技術を習得し、模写制作で培った技術と方法論から作品制作を行なっている画家である。山下の作品は、一見すると伝統的な絵画技法によって描かれている。だが、古典画題への独自の分析とアプローチによって、鑑賞者による東洋絵画への再考を契機させている。つまり、山下の仕事は、日本の文化や歴史、東洋思想を方法論として用いる現代絵画であるだろう。 京都初個展となる今展のタイトル「寒山拾得」は、禅画の有名な画題である。日本におけるこの画題は、初期水墨画の時代から江戸時代の曽我蕭白、伊藤若冲、長沢芦雪、近代では、横山大観、岸田劉生ら画家だけでなく、小説家の森鴎外、坪内逍遥らによっても作品化されてきた。今展で山下は、「寒山拾得」を画題に、水墨画の手法の1つである罔両画(もうりょうが)様式を駆使した新作を中心に展示構成する。罔両画とは、室町時代足利将軍家の東山御物に多く見られる中国南宋時代の薄墨で描くコンセプチャアルな表現である。その意味は、罔両(うすかげ)に問いかけた影(本影)と薄影(半影)の観察について荘子によって論述された「斉物論篇」に由来する。山下も荘子と同じく、時代を超えて影と薄影の意味を問うているのであろうか。 さらに、山下の「寒山拾得」には、舞踏家の故・大野一雄へのリスペクトが見られる。その希有な結びつきにより、山下の作品は新たな世界へと昇華している。 北山・東山文化を生んだ京都にて、ぜひ山下の「寒山拾得」を堪能して頂きたい。 *期間中、隼田大輔個展(写真)「いさなとり」(和室スペース)を同時開催しております。 [作家プロフィール] トークイベント 全文提供:雅景錐 会期:2012年11月9日(金)~2012年12月1日(土) |
最終更新 2012年 11月 09日 |