岩熊力也 展 |
展覧会 |
執筆: カロンズネット編集 |
公開日: 2010年 12月 28日 |
来年早々には国立新美術館での「アーティストファイル」に出品がが決定し、ますます活躍が期待される岩熊力也の新作展。 近年は山水画を思わせる風景の中に動物や様々な事象を織り交ぜた、繊細かつダイナミックな作品を発表してきた岩熊力也。湧出する山々の絵画を経て今回は「砂の島」をテーマに新作を発表致します。大作4 - 5点と、小品数点を展示予定。同時期に、第一生命南ギャラリーでも個展を開催いたします(2011年1月14日(金)-2月10日(木) 。 砂の島 この一年私は新橋界隈にて埋蔵文化財発掘作業員として働いているが、その大地を掘り進めてゆくと砂の層に行き当たる。仄かに潮の香りの漂う穴の底でその仄暗い緑灰色に囲まれていた時、私は浮遊感を味わった。月面を漂う自分がみえた。 日本は6852の島々からなる。それぞれの島の浜辺は波に洗われ、境界線は常に揺れ動いている。地図を眺めれば、爆破され大陸から引き離された欠片が海洋を漂っているようにも見える。頼りなげな国土。思えばこの国はイザナギとイザナミが海をかき回して引き上げた矛から滴る一しずくの塩から始まったのだ。それから積りに積もって今や6852ではある。しかし気まぐれな神々は人間存在になどお構いなしである。彼らが欲しているのは変化と混沌だけだ。 「かちかち山」のお人好し(のんき?) なタヌキはウサギに騙されつづけたあげく泥の舟に乗りこみ沈められた。敗戦後、平和を謳歌しつづけた私たちもまた砂の島の上で何も気づかずあぐらをかいているのかもしれない。 「砂の島」と題された絵画群は国土流出の危機を憂う悲壮感からスタートしたが、同時に制作の現場では始源の世界への憧憬もほとばしりでた。描きながらそのことに気づいた。絵画もまた人間存在になど興味ないのだ。 岩熊力也 Rikiya IWAKUMA グループ展 パブリックコレクション ※全文提供: コバヤシ画廊 会期: 2011年1月7日(金)-2011年1月22日(土) |
最終更新 2011年 1月 07日 |