吉岡さとる:メカ・メカ |
展覧会 |
執筆: 記事中参照 |
公開日: 2014年 7月 11日 |
セルン、シンクロトロン、スーパーカミオカンデ・・・化学や物理学にさしたる興味の無い方でも、独特の名称からそれら世界的な研究施設について何かしら聞いた事はあるだろう。吉岡さとるはそうした世界の名だたる施設の深部に入り込み、撮影する活動をしている。 吉岡の作業は施設を正確に記録するというよりも、その造形的な美しさ、面白さを切り出す事に重点が置かれている。想像を絶するスケール感、複雑に組み合わされた見た事もない機械類、生物を思わせるようにうねるケーブルやチューブ、それぞれの持つ機能とその内側で起こされている反応といったものは我々の知る由も無いところだが、吉岡の撮影したそれら構造物はあたかも生命を持ち、自らの力で蠢いているのではないかとさえ想像させるものがある。 新作で吉岡はこれまでにない方法で作品をパッケージした。画面サイズは10x15cm、アーカイバル・ピグメント・プリントでの出力とこの小ささのおかげで画面はミニアチュール絵画のような濃密さを獲得した。実験施設を標本化するという逆転的な発想に基づいて、それらは通称ドイツ箱と呼ばれる標本箱に収められた。 建築家ミース・ファン・デル・ローエは、美しい建築物の裏側にあるディティールを称して「神は細部に宿る」と言ったが、吉岡の写真はその宿った神をむき出しにしようとするかのような作業ではないだろうか。更には化学、物理学という現代の神話を伝える宗教画と見る事ができるのではないかとさえ思う。標本箱に収めるという作業によって、作品がロシアイコンのような可憐さをもった神々しさを獲得したのも頷けるのである。 ☆オープニングパーティは7月18日(金)19:00~ 全文提供:レントゲンヴェルケ 会期:2014年7月17日(木)~2014年8月10日(日) |
最終更新 2014年 7月 17日 |