中井敦子:つかのあひだ |
展覧会 |
執筆: 記事中参照 |
公開日: 2013年 10月 17日 |
中井敦子は、不条理にも見える背景、状況に自画像を溶け込ませ、流れていく感情をすくい上げる画家です。荒れ狂う大海を、怪物(巨大なタコ)をかいくぐりながらネコと一緒に悠然と泳ぐ女性や、なぜか室内でレインコートを着てたたずむ女性。それらのすべてが、言葉にしにくい気分を伝える彼女自身です。 自然の猛威を象徴する怪物や噴火する火山が登場する作品などは一見、神話のパロディーを思わせますが、中井は物語を伝えようとしているわけではありません。意味の上では激しいと言ってよい背景にもかかわらず凛とした雰囲気を保つ表情。そこから想像できるのは、困難を振り切って前へと進む気高さです。 夢で見るような奇妙な世界に「理性的自己」の証しである自画像を組み入れる作風は、むしろ自己と向き合う中から生まれてきました。自身を見つめれば見つめるほど、自身は説明のつかない謎になり、無意識に包まれたような自己のとらえがたさが浮かんでくる――。画面からは、そんなやるせなさも伝わってきます。 今にも雨が降り出しそうな空を背景に11人の女性(自画像)が宙を舞う「くもり空の遣い」(2013年、カンバスに油彩、2枚組、90.9×233.4センチ)をはじめ、すべて新作の油彩画十数点の出品を予定しています。画像は「希望を忘れずに」(2013年、カンバスに油彩、65.2×65.2センチ) [作家プロフィール] 全文提供:橘画廊 会期:2013年11月12日(火)~2013年11月30日(土) |
最終更新 2013年 11月 12日 |