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エラッド・ラスリー
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2012年 5月 17日

Elad Lassry | Four Braids (Yellow), 2012 | C-print, painted frame | 36.8 x 29.2 x 3.8 cm | © Elad Lassry Courtesy of Luhring Augustine, New York

Elad Lassry | Untitled (LF Green Bed), 2012 | Beech wood, paint | 71.1x91.4x 51.8cm | © Elad Lassry Courtesy of Luhring Augustine, New York

Elad Lassry | Untitled (Passacaglia), 2010 | Super 16mm, silent | 15:27min | © Elad Lassry Courtesy of Massimo De Carlo, Milan

エラッド・ラスリーは1977 年、テルアビブに生まれ、ロサンジェルスを拠点に活動している作家です。彼の写真作品やフィルム作品は、広告写真のように魅力的でありながら、どこか離隔した印象を与えます。彼自身の歴史やフォーマリズムに対する問題意識のもと、現代の視覚文化における「イメージ」の在り方に対する問いと探究が試みられています。 写真作品は、人物や動物、日常的なオブジェなどをモチーフとし、けばけばしい色の地を背景にすることにより、モチーフが本来のコンテクストから引き離されています。また、どの写真作品も一般的な雑誌サイズに限定して制作されており、フレームはすべて、各作品の鮮やかな基調色に塗り覆われ、写真イメージと一体化しています。広告やヴィンテージ雑誌、絵本、映画のスチル写真といったものを基に、画面構成や色の選択が厳密にコントロールされて制作された写真作品は、既製のイメージを用いたコラージュとも、アナログとデジタルの間を戯れる新たなステージド・フォトとも、フレームと一体となってオブジェ化したイメージとも受け取ることができます。ラスリー自身が「苛立たしい映像nervous pictures」と名指すこれらの作品は、「知覚を狂わせ、視覚情報を受け取る際の、あるいは世界を知るうえでの、安定をどこか揺るがすもの」です。派手な色彩、あるいは多重露光やぶれによってその揺らぎは増幅され、見る者の視線は決して落ち着くことができません。ラスリーは、これらの作品が、そのイメージ性あるいは物性、はたまたその両方の、いずこにあるのかという問題を提起し、映像を経験する際の物質/非物質性について問うています。 イメージと物の関係や、ある文化的な参照項を持つイメージの受容に対する関心は、フィルム作品や立体作品にも見ることができます。本展に出品される16mm フィルム作品Untitled (Passacaglia)は、革新的なコレオグラファーであるドリス・ハンフリーのコレオグラフィーPassacaglia(1938)に基づいたテレビ・ドキュメンタリーに想を得ています。 このドキュメンタリーは、ロベール・ドローネーのペインティングTall Portuguese Women(1916)が掛けられた壁面の前で踊るニューヨーク・シティ・バレエ団を撮影したものですが、ラスリーの作品は、コレオグラフィーや舞台、脚本へ言及しているわけではありません。構成主義映画を想起させるカメラのアングルや動き、抽象とも具象ともつかない曖昧さ、平面と奥行きの間を行き来する画面、これらはすべて「見る」という行為自体に対する問いを提起しています。 ラスリーはまた、本展の立体作品のひとつとして、フレームを示唆する、木製のベッドを模した作品を制作しています。ベッドと呼ぶには小さいその作品は、4つの十字架の飾りを持ち、緑色の塗料に覆われています。機能性や象徴性、あるいは絵画性にも還元しきれないこの作品もまた、写真作品やフィルム作品と同様に、作品の在処を問うものです。 イメージと物との間の緊張関係を生み出すことでジャンルを超えた問いを立ち上げるラスリーの作品は、クンストハレ・チューリッヒやホイットニー美術館での個展や、昨年では第54 回ヴェネチアビエンナーレなどで、国際的に注目を集めています。

[作家プロフィール]
Elad Lassry (エラッド・ラスリー):
1977 年 テルアビブ生まれ、ロサンジェルス在住。

<学歴>
2007 年 University of Southern California (ロサンジェルス) 美術学修士号取得
2003 年 California Institute of the Arts (ヴァレンシア) 美術学士取得

<主な個展>
2012 年 David Kordansky Gallery (ロサンジェルス)
Fondazione Galleria Civica (トレント)
Kunstnernes Hus (オスロ)
2011 年 Elad Lassry: Untitled (Ghost), Tramway (グラスゴー)
White Cube (ロンドン)
Galerie Francesca Pia (チューリッヒ)
2010 年Elad Lassry: Sum of Limited Views, Contemporary Art Museum, St. Louis (セントルイス)
Galleria Massimo De Carlo (ミラノ)
Kunsthalle Zurich (チューリッヒ)
Luhring Augustine (ニューヨーク)
2009 年David Kordansky Gallery (ロサンジェルス)
Elad Lassry: Three Films, Whitney Museum of American Art (ニューヨーク)

<主なグループ展>
2012 年Hans-Peter Feldmann, Elad Lassry, Joao Maria Gusmao and Pedro Paiva, Kunstnernes Hus (オスロ)
2011 年 American Exuberance, Rubell Family Collection (マイアミ)
The 54th International Art Exhibition: ILLUMInations, Venice Biennale (ベネチア)
Everything you can Imagine is Real..., Xavier Hufkens (ブリュッセル)
Deutsche Börse Photography Prize 2011, The Photographers' Gallery (ロンドン)
Secret Societies, Schirn Kunsthalle (フランクフルト)
Time Again, SculptureCenter (ニューヨーク)
2010 年Still Life, Vancouver Contemporary Art Gallery (バンクーバー)
New Photography 2010, Museum of Modern Art, New York (ニューヨーク)
Les Rencontres d\'Arles 2010 / Edition 41, Arles (アルル)
At Home/Not at Home: Works from the Collection of Martin and Rebecca Eisenberg, Center for Curatorial Studies,
Bard College (ニューヨーク)
2009 年Dance with Camera, Institute of Contemporary Art (ICA) Philadelphia (フィラデルフィア)
The Perpetual Dialogue, Andrea Rosen Gallery (ニューヨーク)
Beg, Borrow and Steal, Rubell Family Collection (マイアミ)
Berlin-Los Angeles: A tale of two (other) cities, Galleria Massimo De Carlo (ミラノ)
The Generational: Younger Than Jesus, New Museum (ニューヨーク)

5月26日(土)には18:00から20:00までオープニング・レセプション

全文提供:ラットホールギャラリー


会期:2012年5月26日(土)~2012年7月29日(日)
時間:12:00 - 20:00
休日:月
会場:ラットホールギャラリー

最終更新 2012年 5月 26日
 

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