淺井裕介:根っこのカクレンボ@武蔵野プレイス |
展覧会 |
執筆: 記事中参照 |
公開日: 2011年 7月 12日 |
淺井裕介は、絵描きである。 それ以上でもそれ以下でもない。純粋なる絵描き。その言葉通り、淺井裕介は絵を描き続ける。ある時はマスキングテープとマジックを使い、ある時は泥を用いて、また最近では小麦粉を水に溶いて描くなんてこともしている。少しでも淺井と時間を共にすれば、休みなく絵を描き続けるその姿に誰もがきっと驚かされるに違いない。 展覧会のためにとか、作品の納期が迫っているとか、そんな具体的な理由がなくとも、淺井の手は休むことを知らない。なんてことはない世間話の最中でも、淺井の手元になにか描けるものがあればそこに絵が生まれる。否、描けるものがなかったとしても、例えばホコリが少し積もっているだけで、淺井の指はホコリを押しのけそこに絵を描き出す。 どれだけ描くことがあるのか?描きたいものが尽きてしまうことはないのか?そんなこちらの心配はどこ吹く風とばかり、淺井が訪れた後には例外なく多くの絵が残されることになる。 なぜ淺井は、こんなにも絵を描きつづけることができるのだろうか? その疑問の答えが、壁に向かい絵を描く淺井の後ろ姿を見ていた時に、フとわかった気がした。下絵も設計図も描かれていない真っ白な壁に、淺井はいつもの通り黙々と絵を描き続けていた。その手は一切迷うことなく、マスキングテープを次々と貼りその上にマジックで植物を描き続けた。植物はどんどんと成長していき、最後にはそこに大きな木の絵が残っていた。その一部始終を見ていて、淺井は描いているのではなく、描かされているのだと、妙に納得した。 いつだって淺井は、自分が立つ場所や空間やそこに流れる時間と対話しながら絵を描きだす。その声がどんな小さくても、耳を澄まして丁寧に聞き取って、最終的に絵に変換するのだ。だから淺井の描くものが尽きることは決してない。訪れる場所がなにを描けばいいのかを教えてくれるのだから。 ここ武蔵野プレイスは、淺井になにをささやくのだろう。 淺井の手は、その声をどんな風に伝えてくれるのだろう。 私たちも、絵描き・淺井裕介の作品を通して、武蔵野プレイスの声にじっと耳を傾けてみよう。 会期中イベント ■公開制作 ■ギャラリートーク 全文提供: Art Center Ongoing 会期: 2011年7月9日(土)-2011年8月30日(火)9:30 - 22:00 |
最終更新 2011年 7月 09日 |