山本一弥 展 |
展覧会 |
執筆: 記事中参照 |
公開日: 2011年 5月 09日 |
参考作品《rebirth》2010年 | H650xW980xD120mm|透明樹脂 acrylic (plexiglas) | 撮影 : 佐々木 敏晴 | Copyright © Kazuya Yamamoto All Rights Reserved. 1978年高知県生まれの山本は、2000年武蔵野美術大学彫刻科を卒業、2002年には同大学の大学院を修了しました。近年では北京での個展や、企業のオフィス空間のためにコミッションワークも手掛けるなど、着実にその活動範囲を拡げています。 山本の彫刻には、まるでそれ自体が生命を宿しているかのような、とても不思議な印象が漂っています。巻貝や珊瑚、ドレスのドレープや毛髪の流れなどを連想させる、連続性をもった形が複雑に集まって、全体をシンメトリーな形に構成しています。 またその素材も、骨や貝などの有機物のような、柔和さと硬質さを併せもった独特の質感をもっています。淡く混色された透明樹脂が用いられているため、光が微かに立体の内部にまで達し、全体がほの明るく温かな光に包まれているかのように見えます。 山本の制作には、執拗なまでの造形へのこだわりがうかがえます。 機械による作業はほとんどなく、粘土での形づくり、型抜き後の削り出し・磨き込みは、全て手仕事により数週間に渡り行われます。 鏡に映したように中央から反転したふたつの形も、驚くことにすべて手作業によって対称に整えられています。対象と感覚的に接するこの作業が、山本にとっては「絵を描く事」に近く、形を生み出す上では、欠く事のできない大切なプロセスとなっています。 さて、彼の作品が一様にシンメトリーなのはなぜか?それは、過去のエピソードから計り知る事ができます。 初期の頃の作品は、誰もがよく知るバンビ、キューピーなどをモチーフに選び、あえてそのキャラクターを限定する「顔」や配色は排除して、逆さに設置したりして、展示を行いました。「何の何である」と限定させずに「誰にでもある記号的なイメージ」を作りたかった、という作家の思惑どおり、観客は初めて見る形でありながら、どこか懐古的な奇妙な感覚を味わったことでしょう。 このとき山本は、キャラクターなどのシンボリックな形が、単純化を進めて行くとシンメトリーであるという共通性に着目していました。また一方で、身体構造にも同様の事が多くみられることに興味を惹かれ、積極的に作品に取り入れるようになりました。 学生時代には、彫刻の手像が、当たり前のように手首のところでスッパリ切れているのを見て、妙な違和感を覚えたといいます。その違和感こそ、その後の彼の作品を大きく展開させる作家の本質だったのではないでしょうか。ここでの手首の断面は、現実世界とイメージの世界を概念的に隔てる境界線を意味し、その隔たりを彼は自身の作品から取り去ったのです。 「物理的意味での立体完結は、どこか心地よい。」と話す山本の真意は、「切断面=現実世界への出口」を持たない形が、観る者の心に、イメージの波紋を永遠と拡げ続けること、を意味しているのではないでしょうか。本展では、数点の立体作品を展示する予定です。ぜひ、ご期待下さい。 作家コメント 山本 一弥 主な個展 グループ展 受賞歴 コミッションワーク 全文提供: キドプレス 会期: 2011年6月11日(土)-2011年7月16日(土) |
最終更新 2011年 6月 11日 |