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映像をめぐる冒険vol.3:3Dヴィジョンズ-新たな表現を求めて-
展覧会
執筆: カロンズネット編集   
公開日: 2010年 12月 01日

《故郷とは? ジュネーヴにて/Landing Home in Geneva》 
藤幡 正樹 2005年

東京都写真美術館開館以来の映像部門基本コンセプトである5つのテーマ「イマジネーションの表現」「アニメーション」「立体視」「拡大と縮小」「記録としての映像」について、毎年ひとつずつ取り上げ、収蔵作品を中心に、多彩な特別展示とあわせて構成していくシリーズ企画 [映像をめぐる冒険]。3回目となる今年は、3D映画などで使われている視覚原理「立体視」がテーマです。平面にあるはずの画像が飛び出して見える立体視ですが、今回は3D映画やアトラクションのようなスペクタクル性を追求するのではなく、立体視という表現手法に何が可能なのかを検証します。19世紀中頃から近代までの原始的な立体写真や立体視装置と共に、立体視を利用した現代の作品を展示し、表現手法としての立体視を多角的に検証します。さらに、そうしたメディア探求から生まれる表現の一つの到達点として、メディアアーティスト藤幡正樹の作品を展示します。

1章 浮遊する視覚
絵画の世界では、奥行きを表現するために空気遠近法や一点透視図法など様々な手法が試みられてきました。19世紀中頃になると右目と左目の視野のずれを利用し、立体的に奥行きを表現する立体視の原理と装置が発表されました。立体視のこれまでの平面的な奥行き表現を超えた新しい立体感は、人々に驚きを与え広く普及していきました。1章では 1851年にロンドン万博で紹介されたクリスタルパレスの立体写真など初期立体写真にとって重要な作品や資料を十数点紹介します。
あわせて、CGなど現代のテクノロジーと初期立体視の仕組みを組み合わせた津島岳央の新作を展示します。

2章 メカニズムへの焦点
立体視のメカニズム自体は非常にシンプルなものなので、それを利用した様々な装置が生み出されてきました。例えば、立体的なスライドショーを見ることが出来る玩具 ビューマスターや赤青メガネをかけると絵が飛び出して見えるアナグリフ、その他ステレオカメラやステレオビュワーなど20世紀中頃までの装置を数十点紹介し、立体視効果を利用するための様々な仕組みを検証します。
あわせて、アナグリフの仕組みを利用し、自分の影を立体的に見せてくれる五島一浩の《STEREO SHADOW》を展示します。 最も原始的な映像体験である影の動きが立体的に見える様をお楽しみください。

3章 新たな表現を求めて
3章では、コンピュータやモバイル機器など様々なテクノロジーが生活に定着した現代における、立体視を使った表現の一つの到達点として、藤幡正樹の「Field-works」シリーズを紹介します。「Field-works」は、世界各地で、ひとびとの活動とその場所を同時に記録することをテーマに行われてきました。藤幡はGPS(地球上の現在位置を調べるための衛星測位システム)とビデオカメラを持ってフィールドワークを行い、リニアな映像記録を撮影しながら、同時にGPSで移動の軌跡を記録。両者をコンピュータ上で対応させ、3D技術を用いて提示することで、全く新しいビデオアーカイブを作り出します。今回展示される《故郷とは? ジュネーヴにて/Landing Home in Geneva》は、ジュネーヴへ移住して通訳として働く人々に取材したものです。GPSが記録する客観的な情報と、全方位カメラで撮影した個人的な物語や交流の軌跡が掛け合わされることで、国際都市としてのジュネーヴが持つ場所性が浮き彫りにされます。

※全文提供: 東京都写真美術館


会期: 2010年12月21日(火)-2011年2月13日(日)

最終更新 2010年 12月 21日
 

編集部ノート    執筆:平田 剛志


《故郷とは? ジュネーヴにて/Landing Home in Geneva》
藤幡 正樹 2005年
画像提供:東京都写真美術館

    映画『アバター』の大ヒットで3D映画元年と言われ、3Dテレビの発売も話題を呼んだ2010年。2011年も映画『トロン:レガシー』『グリーン・ホーネット』など、3D映画の大作が公開され、全国各地の映画館でも3D映画上映が普及してきている。また、任天堂による携帯型ゲーム機3DSの発売も近い。
    娯楽や映像経験の1つとして急激に定着してきたように見える3D[立体視]だが、実は170年の歴史をもつメディアである。その歴史について「立体的」におさらいできるのが本展である。展覧会は「立体視・浮遊する視覚」「メカニズムへの焦点」「新たな表現を求めて」の3章で構成され、3D[立体視]の歴史を辿ることができる。展示されるのは、19世紀から20世紀初めにかけての立体写真、立体視装置、3D映画のポスターや現代作家によるメディアテクノロジーや立体視を活用した作品である。これら展示品を概観すると写真、映像・映画、印刷物など、あらゆる媒体に3Dが活用され、栄枯盛衰を経ながら現在まで3Dが楽しまれてきたことがわかるだろう。
    本展の最大の魅力は、3D[立体視]を実際に体感できることにある。初期立体写真の展示ではステレオビュワーを使って見ることができるので、裸眼で立体視ができない人も挑戦してほしい。現代作家の展示においては、専用メガネをかけて鑑賞したり、インタラクティブな要素があるなど、体感しながら楽しめる展示となっている。
    人気が出ては廃れるという変遷を繰り返し続けてきた3D[立体視]。しかし、ものが立体的に見えるという視覚のイリュージョンが惹き起こす魅力に囚われる人がいる限りこの人気は変わらずに続いていくだろう。


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