吉田博:漂流する風景とねじくれた神秘 |
展覧会 |
執筆: カロンズネット編集 |
公開日: 2010年 10月 18日 |
吉田博は1988年京都府生まれ、現在は金沢美術工芸大学油画科4年に在籍中です。学外でも積極的に活動し、2008年に新宿区 とトーキョーワンダーサイトの共催による『シンジュク アートインフィニティ』に参加、2009年はwaitingroomで初個展 『WORLDS』を開催。同年『シェル美術賞2009』で入選を果たし、アートフェア『ULTRA002』における展示でも注目を集めまし た。2010年はフランス大使館旧庁舎での『No Man’s Land』に参加するなど、さらに活動の幅を広げています。 吉田にとってwaitingroomでの2度目の個展となる本展では、「不確かな世界とリアリティ」をテーマとした新作のペインティ ング作品を展示いたします。 本展タイトル『漂流する風景とねじくれた神秘』には、吉田自身の、「ひとつにまとまった完全な世界に憧れるけど、それは不可 能だからバラバラなものをすべて受け入れて、不完全を反転させて完全を求めようという倒錯した世界観=ねじくれた神秘 を表現したい」という想いが込められています。様々な場面、物語が不完全でバラバラのままに共存する「漂流する風景」、それ を生成する「ねじくれた神秘」こそが純粋で美しく、確かな足場としてのリアリティを感じる、と吉田は言います。 自身を取り囲む世界に対する吉田の言葉からは、懐疑、焦燥、そして反抗が感じられますが、それ故に、揺れ動くあらゆる現象 のすべてを受け入れ、自身を透過させることで見えてくる風景、そのリアリティを追求しようという、若き作家としての静か な意欲が垣間みられます。 新作『宗教的絵画』、『燃える』では、荒涼としつつも静謐な画面に、様々なモチーフ・イメージが落雷により燃えている様子が、 さながら古代宗教の儀式のように描かれています。モチーフ・イメージは、半ば偶然に選定されています(「たまたま見たフラ イヤーに載っていたルソーの作品や美術手帖で見た若手作家の作品」など)。ヤギ、干し草、洋の東西の絵画といったものが、本 来の文脈や歴史的価値から離れ、落雷という「神秘的な何か」によって燃え上がる風景は、吉田の世界へのまざなしを象徴する ものといえるでしょう。 吉田が描く、純粋がゆえにねじくれた神秘世界を、この機会に是非、ご高覧頂けますようお願い申し上げます。 吉田 博(よしだ ひろし) ※全文提供: ウェイティングルーム 会期: 2010年11月20日(土)-2010年12月25日(土) |
最終更新 2010年 11月 20日 |