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綿谷修:Juvenile
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2010年 6月 13日

画像提供:ラットホールギャラリー|Copyright © Osamu Wataya

今年3月、「CHILDHOOD」と冠した写真集を刊行した綿谷修が、続く本展で発表する新作「Juvenile」は、幼年期から成人期へのつかの間にしか見ることのできない少年/少女の複雑な表情を写し出しています。大人になることを待ち焦がれながらも無邪気に川辺で遊ぶ子どもたちには、純真さ、そして闊達さといった、思春期特有の振舞いと同時に、大人に眼差されていることへの自覚があります。仲間たちとふざけ笑いあう時も、憂いた目でまっすぐにこちらを見つめる時も、完全な成熟を迎える手前の彼らの瞳は、若さが発揮する限りない可能性と、大人の世界に裏切られることへの恐れとを持ち合わせているのです。

幼年期を過ぎたジュヴナイル(年少)の時代を生きる彼らを、綿谷は「外」からやってきた観察者として、時にユーモアや憂愁を交えながらとらえています。彼らと出会い、「無条件にいいと思えた」という作者が抱いているのは、彼らの時代への憧憬でも、自身の少年時代への追憶でもなく、その存在に対する畏敬にほかなりません。川辺での遊びを真剣に生きる彼らの姿は、遠く離れたところにあっても、作者にとって、またわたしたちにとっても、密着的に近い存在なのです。

ジュヴナイルという言葉には、「幼鳥」という意味も込められています。夏の日差しのなか戯れるティーンエイジャーを写し出すと同時に、いずれは「巣立つ」彼らと綿谷の写真は寄り添い、一緒に戯れるかのようでもあります。

本展に先立ち発表した写真集『CHILDHOOD』では過去の作品を鮮やかに再編集・構成してみせ、近作《Capability》(『CHILDHOOD』所収)や《Drowning in flame》(2010年、photographers’ gallery)を発表するなど、その手法や被写体を次々と変えていきながら、意欲的に制作を続けています。2007年「Rumor/Pond」以来、3年ぶりとなるラットホールギャラリーでの綿谷修展「Juvenile」にご期待ください。

展覧会に合わせまして、ラットホールギャラリーより写真集『Juvenile』を刊行いたします。綿谷修の新作を写真批評家・倉石信乃氏のテキストとともに収めた126ページの写真集です。

綿谷修(わたやおさむ)
1963年北海道生まれ、東京都在住。1989年よりアートディレクターとしてヒステリックグラマーおよびラットホールギャラリー発行の写真集ディレクションを数多く手がける。2006年、第22回東川賞特別賞を受賞。主な個展に「Rumor/pond」(2008/ RAT HOLE GALLERY)。主な写真集に『River Bed』(1996/Hysteric Glamour)、『遠軽』(1996/Taka Ishii Gallery)、『Renoir』(1998/Hysteric Glamour)、『昼顔』(2004/蒼穹舎)、『Rumor』(2007/RAT HOLE)、『CHILDHOOD』(2010/RAT HOLE GALLERY)など。

※全文提供: ラットホールギャラリー


会期: 2010年7月23日(金)-2010年8月25 日(水)

最終更新 2010年 7月 23日
 

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