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Published: June 15 2012 |
イムラアートギャラリー京都にて岡田真希人個展を開催致します。今回初となる本若手作家の展覧会では「焦燥と挫折、希望」を題材とした新シリーズを発表。不安、逃避、異世界や過去へのあこがれ、そしてその先の希望、という普遍的な精神状態の表象として金術、科学実験、航海などのモチーフを卓 越したデッサン力により描きます。精緻な描写に鮮やかな青の色面により切込みを入れ、神秘的で引き 込まれるような絵画空間が構築されています。 イムラアートギャラリーが注目する実力溢れる若手作家、岡田真希人の造形世界を是非ご高覧ください。
[作家コメント] 現在、美術において「崇高(sublime)」というのは死語なのかもしれません。(20世紀にかけても 一種のロマンティック・リヴァイヴァルはあったにしても)。それでも、そこに向かって歩んでいった あらゆる作家たちの誠実さの検証と、そうした「美学」の回復とが私の仕事なのだと思います。たとえ 18世紀末~19世紀的な(ここでは広義の)ロマン主義的な熱病だとしても、むしろもう一度、その熱に浮かされながらも静寂と深淵の世界にたどり着き、その最奥で昂る感情に触れられはしないかと。( 私的な感情でもあるが、今はその機だとも思います)。
「崇高」へ向かおうとする、ロマン主義的な精神、観念、感情にまつわるものの(ある意味で矛盾した言葉になるが)普遍性または遍在性を考えるとき、私はできるだけ旧来の手法のひとつ(絵画)で単 純に扱うことが望ましいと思っています。「出現(appearance)」、「本質(essence)」と「照応( correspondence)」、古びた魔術的なやり方でしょうが . . . 。 自然への畏怖、危惧や恐怖、死、また、そこからの逃避か、異世界や過去へのあこがれ、自分だけの 世界への没入 . . . はりつめた精神の向こうにある希望 . . . 希望すら乗り越えるべきものかもしれません 。バークのいう「欠如した状態(privation)」すなわちライトモチーフとしての空虚(vacuity)、闇 (darkness)、ほの暗さ(obscurity)、孤独(solitude)、沈黙(silence)、無限(infinity)、そして モチーフとしての航海、嵐、薄暗い化け学の実験室、夜、月 . . . 。これらはあくまで必要条件でしかあ りませんが。
錬金術師たちが、暗い実験室で、物質と非物質の創造の原理を実験器具のなかに再現しようとしたように、画家たちは「世界」を絵の中にもう一度見出したい、それが永遠の断片にすぎなくても、証として保存したいと徒労のなかで欲してきたのではないかと思います。私は彼らの追体験をしながらも、むしろそうした熱病的な気分というか気質みたいなものを、画面上にとどめることはできないかと考えて います。(動機や意志みたいなものでもあります)。
大切なのは絵画としての純度をいかに高めてやるかです。グラファイトの鈍い色味とそれにニス層の 質感が合わさった効果と、おもに合成ウルトラマリンを基軸にして作られる透明な青。私にとって、その青は、静寂と深淵に引きずり込む鎮静剤であるとともに、その鎮静のただなかに昂りがある厳格で気 高く危険な色だと感じます。そして、単一の中に(その合成過程と、またわずかな混色とによる)緑や赤の陰をとどめておくことができ、恐れや迷いが別の感情に高まろうとする状態を現すのに適している と考えています。私のしていることは、画面に透明な青い絵の具を塗り付けているだけかもしれません 。ただそれが断片的で不完全なものだとしても、ロマン主義的精神の普遍性、遍在性のひとつの証になればよいと思います。
岡田真希人
全文提供:IMURA ART GALLERY
会期:2012年6月9日(sat)~2012年7月21日(sat) 時間:11:00 - 19:00 休日:Sun/Mon/National Holidays 会場:IMURA ART GALLERY
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Last Updated on June 09 2012 |