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日野田崇:新しい筋肉
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2011年 8月 03日

《Lost People in the Woods》セラミック / Ceramic | h23.5 x 45.5 x 48 cm | 2011 | 撮影:福永一夫 | 画像提供:イムラアートギャラリー

本展は、2009年個展「変形アレゴリー」以来、当ギャラリーでは2年ぶりとなったイムラアートギャラリー京都での個展(2011年6月4日~7月23日)の巡回展となります。

セラミック・アーティストの日野田崇(1968 神戸市生まれ)は、1991年に大阪芸術大学芸術学部工芸学科陶芸コースを卒業し、現在は京都嵯峨芸術大学芸術学部の准教授です。

日野田は、陶土に日本のマンガやアメリカンコミックのような線や図形、絵をのせて作品を作ります。作品は、造形、色、表面の図柄が混在しながらも共存しており、見る者は二次元(表面)と三次元(造形)の世界を往来します。日野田の作品は、有機的なかたちと、マンガという親しみやすい題材によって見る者を容易に近づかせますが、実は物語のない断片的な情報や、不気味にも見える図柄の集まりということに気づくと、我々は戸惑い、不穏さを感じます。愛嬌と狡猾さが同居しているようなこれらの作品は、冷静に社会を見つめる作家の批判精神を代弁しているようにも見えます。作品に描かれているように見える絵は、実はマスキングテープにより巧みに仕切られた平面に色を吹付けてできた図柄であり、現在の日野田の制作には欠かせない方法です。この、日野田の精巧なつくりこみが、やがて存在感と説得力を備えた創造物となるのです。また日野田は、展示空間も徹底してつくりこみます。プラスチック(カッティング)シートを巧みに切り抜き、展示空間の壁、床、天井に計画的に時に自由に線や絵を描き(実際は貼る)ます。まるで作品から線や図柄が飛び出しているようにも見え、正に展示空間がひとつの世界となります。このようにしてできあがる日野田の作品は「陶芸」という括りではおさまらず、あらゆる領域の往来を可能にしています。このような作品や展示方法は国内だけでなく海外でも評判を呼び、欧米やアジアでのグループ展にも数多く参加しています。

本展は、「新しい筋肉」と題し、日野田のヴィジョンによるこの先の人類のカタチを表現した作品約5点を展示予定です。今までにはない、紫や緑色を使用した作品も注目です。もちろん、プラスチックシートを駆使したインスタレーションを行います。

また、8月20日(土)18時より、小田島等氏(イラストレーター・デザイナー)をお迎えしての対談を行います。

Artist Statement
この星の上に生命が誕生して以来、その肉体のかたちは常に環境と一体になってメタモルフォーゼを遂げてきた。
しかしヒトが環境を操作し激変させた結果、そのシステム自体が完全に破綻をきたしている。
骨も皮も筋肉ももうその目紛しい変化にはついていかないように感じられる。
しかし、ある音楽家が21世紀の音楽について尋ねられたとき、その答えの中で
「人間はまだまだ原始的な段階なのであり、変化を受け入れることで新たな筋肉をつけるように、長い鍛錬の時期を経て変わっていくだろう」と述べていた。
それはかつてないミューテーション的な変化となるのか、古い倫理観を完全に塗り替えるものになるのか。
いずれにしても、魚がかつて陸上に上がって歩行動物になったくらいのドラスティックな変わりようであるのは間違いないように思える。
そのとき僕たちは一体何処にいるのだろう?まだ地球の上にいるだろうか?
ヒトが類として存続することがこれほど困難に感ぜられる現在、その岐路のヴィジョンが頭の中を去来している。

日野田崇 Takashi HINODA
1968 兵庫県生まれ
1991 大阪芸術大学芸術学部工芸学科陶芸コース卒業
2007- 京都嵯峨芸術大学 芸術学部 准教授
現在 京田辺市に在住、制作する

最近の主な個展
2009 「アレゴリーの暴発 」INAXギャラリー 2(東京)
「変形アレゴリー 」イムラアートギャラリー(京都)
2010 「wound fever」ガレリア・フィナルテ(名古屋)
2011 「新しい筋肉」イムラアートギャラリー京都、イムラアートギャラリー東京

最近の主なグループ展
2003 「大地の芸術 クレイワーク新世紀」(国立国際美術館 大阪)
2006 "Takashi×2: East Meets East Takashi Murakami and Takashi Hinoda"
(Casa Nova Gallery/Santa Fe,U.S.A. kornelia Tamm Fine Arts、Casa Novaによる企画、村上隆氏のプリント作品との2人展)
2006-2007 「 人のかたち-もうひとつの陶芸美 カルチャーギャップなやきものたち」(滋賀県立陶芸の森 陶芸館、兵庫陶芸美術館、静岡アートギャラリーを巡回)
2007 「兵庫の陶芸 いま、ここに何かが在る」(兵庫陶芸美術館 篠山市)
"The Hands on Movement -Crafted Form in Dialogue-"( Liljevalchs Konsthall/Stockholm,Sweden)
"Fragiles -Porcelain,Glass & Ceramics" (ゲシュタルテン出版社によるキュレーション/Design Miami 2007,U.S.A.)
2008 「現代の造形 Life & Art  -陶で彩る」(東広島市立美術館)
"Masters of Disguise" (Mint Museum of Craft + Design/North Carolina,U.S.A.)
東方當代芸術展「楽園」(北京快楽公社 中国)
2009 "Breaking the Mold: Contemporary Chinese and Japanese Ceramic Sculpture" (The Dennos Museum Cente(r ミシガン・アメリカ),
The Marshall M. Fredericks Sculpture Museum at Saginaw Vallery State University/Dai Ichi Galleryとのコラボレーション)

主な受賞歴
1992 朝日陶芸展 朝日陶芸秀作賞受賞
1994 The 14 th Biennale Internationale de Ceramique d’art 1994(ヴァロリス国際陶芸ビエンナーレ/Chateau Musee/Vallauris,France)
Prix de la Chambre Syndicale des Ceramistes(陶芸家協会賞)受賞
1995 日本陶芸展 文部大臣賞受賞 
2010 平成21年度京都府文化奨励賞受賞

主なパブリックコレクション
土岐市、ヴァロリス美術館(フランス)、滋賀県立陶芸の森 創作研修館(信楽町)
世界のタイル博物館(常滑市)、国立国際美術館(大阪)、ジェームズ・ウォレス・アーツ・トラスト(ニュージーランド)
アリゾナ州立大学美術館(アメリカ)、ミント工芸+デザイン美術館(ノース・キャロライナ/アメリカ)

全文提供: イムラアートギャラリー


会期: 2011年8月6日(土)-2011年9月3日(土)
会場: イムラアートギャラリー東京
対談 ・ オープニングレセプション: 2011年8月20日(土)18:00~ 日野田崇 x 小田島等

最終更新 2011年 8月 06日
 

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