高嶺格:とおくてよくみえない |
展覧会 |
執筆: カロンズネット編集 |
公開日: 2010年 11月 25日 |
現代美術家・演出家の高嶺格(たかみね・ただす、1968年生まれ)の活動を紹介する、首都圏初の大規模な個展。 高嶺は、平面、立体、映像作品をはじめ、音や映像、PC制御による仕掛けなどを駆使したメディア横断的なインスタレーション、パフォーマンス、舞台の演出など、多彩な表現形態により、常にインパクトを与える作品を発表しています。2003年のヴェネツィア・ビエンナーレをはじめ、2004年の釜山ビエンナーレなど国際展への出品も数多く、海外でも高い評価を得ています。2005年の横浜トリエンナーレ(第2回)では、劇場のように巨大な空間で、自身の故郷である鹿児島の方言と、世界語として生み出されたエスペラントの言葉を、映像と土に型押しした文字で映し出していく映像インスタレーション《鹿児島エスペラント》(図1)を発表。光と音、オブジェと映像が一体となって展開したこの作品は、高い注目を集めました。 高嶺が制作の糸口とするのは、現代社会における不条理性です。アメリカ中心に進むグローバリズムへの批判を、巨大な粘土の塊と格闘する人間の振舞いにより象徴的に表現した《God Bless America》(2002年、映像作品 図2)、自身の恋人との関係性から、在日外国人をめぐる差別的な感情の問題に触れた《在日の恋人》(2004 年、映像インスタレーション)、プレハブ工法の普及により失われていく伝統的な住居建築についての意識を呼び起こす《Good House, Nice Body》(2010年、映像インスタレーション)など、高嶺は人間の行為に潜む矛盾や非合理な側面に目を向け、批評的に、そしてユーモアあふれる作品として提示します。 本展では、2000年代初頭の作品から、横浜で滞在制作[黄金町エリアマネジメントセンターとの共同で2010年12月より実施]される新作までを紹介します。サブタイトルの「とおくてよくみえない」とは、混雑した展覧会で観客がしばしば発するフレーズの一つです。本来、自由な表現によって成り立つ美術作品が、美術館や展覧会という様々な制約の中で展示されることで生じる矛盾。最新作において高嶺が制作の出発点に据えたのは、そうした齟齬に対する素朴な疑問と興味です。ここから出発した高嶺が、その先に見つけるものは何なのか。それはきっと思いもよらない作品として、私たちの前に現れてくることでしょう。 高嶺 格(たかみね・ただす) アーティスト・トーク ※全文提供: 横浜美術館 会期: 2011年1月21日(金)-2011年3月20日(日) |
最終更新 2011年 1月 21日 |